僕は愛を証明しようと思う。(著:藤沢数希)【僕は読書紹介を証明しようとしたんだが、そのとき電源が色んな意味で落ちた】
著者は数学的に、男性がいかに女性にモテるか。
いかにしてベッドインまで持ち込むのか。
そういったナンパ研究を、小説のスタイルで書いた作品。
世の女性たちからは総じて「ヤリ〇ン小説」として不評だったが。
実際に読んでみると、そういった評価とはまた異なった視点が見えてくる。
以前に進化生物学の本を紹介したけど。
男と女の(オスとメスの)繁殖戦略というのは、
進化生物学においては、大きな研究テーマであり、
そして、一見するとアレだけど、
実はすべて合理的な意味があるという結論でもある。
生物においては、
必ずリソースを多く投入する側(だいたいメス)が、
そうでない側(だいたいオス)を選ぶ権利を持っている。
タツノオトシゴみたいにオスが妊娠する生き物でない限り、
かならず男性がアプローチして、
女性がその中から選ぶ。
この仕組みが変わることはない。
ナンパ研究においてもそこは変わらない。
まずは科学的根拠からモテ道はスタートする。
男は「ショーウィンドーの中のケーキ」であり、
女たちはその中から自由に好きなのを選べる。
だから(男性サイドから見た)モテテクニックのすべては、
いかにして美味しそうなケーキになるか!
という点に集約される。
これが究極的なナンパテクニックである。
本書ではそこまで書いてある。
この点においては世評通りのアンフェアな作品とは思われなかった。
さらに重要なのはここからだ。
しかし女性サイドは、肝心の男を見る目について、
必ずしも固定した基準を持っているわけではない。
一見して判別がつくようならいいけど、
つかない場合に彼女たちは何を選択の基準にするか。
それは、モテる雄であるかどうか、というとこ。
要するに、嘘でもいいから、モテてる風を装えば、モテてしまうのである。
ということを、本書で言いたかったらしい。
とにかく本書においては、
モテるオスの雰囲気、空気感を再現することが、
ナンパ道としての修行の中心的内容なのである。
そのためにはとにかく場数をこなすしかない。
場数をこなせばこなすほど、成功率も上がり、
(ここでいう成功率はベッドインのこと)
成功率が上がると、雰囲気が自然獲得され、
さらにモテてしまうという正の(性の?)スパイラルに入る。
作者いわく。
これを恋愛工学と呼ぶ。
☆★
ここまで。
小説自体はまだ紆余曲折続くのだが、
作者のテーマとしてはここまでで、
男性サイドから見たベッドインするまでの方法論についてのみ書かれている。
だからこそ「ヤリ〇ン小説」の評価を頂いてしまうのだが。
しかし、恋愛工学ってまだ続きがあると思う。
繁殖戦略として、子どもや孫世代が繁殖成功するところまでを含めないと意味ないし、
↑ 育児をする動物の場合は、繁殖成功後も子孫の最大化作業を続けなければならない。
さらに女性のサイドにも当然ながら恋愛工学があるだろう。
たとえば・・・
パッと見て、いちばん分かりやすい女性側の恋愛工学は、
彼女持ちの男を奪え! という掠奪戦略である。
以前に、少しだけ紹介したけど。
これも恋愛工学なのではないか?
視点が女性側から視たものになってはいるけど。
という訳で、恋愛工学とか繁殖戦略というものは、
著者が述べるナンパ道だけではなく、もっと奥が深いものなのだろう。
例えば、人間の男女が好む異性の部分、
低ボイス、巨乳、高身長、大きなおしり、
これらすべて優れた生存能力や繁殖能力のメルクマールであり、
クジャクの羽みたいにただの飾りとしての部分はひとつもない。
人間においては、性的魅力はすべて機能を示したデザインなのだ。
髪型くらいであろうか。生存能力と直接的に関係ない指標は。
こりゃ確かにアップル製品が流行るわけだ。
人類にとって、美とは、性的魅力とは、実に機能美なのである。
そして我々が美少女とかイケメンとかに惹かれるのは、
自分の子にその美を受け継ぐこと。
つまり次世代の繁殖も成功させるためである。
自覚しておられるだろうか?
面食いな好みが、実は子孫のためであることを。
☆★
というわけで、本当の恋愛工学はまだまだ奥深いなと思わざるを得ないと、
私はそう思ったのでした。
追記++++
ちなみに人類において女性側も装うのは、
爆裂的に高いリソースを持った男性が、
人類社会においては存在するからである。
(アラブのイケメン王子的な)
この場合だけは、選ぶ側と選ばれる側が逆転するのだ。
追追記:とはいえ本書は小説の体裁を取っているので、
物語は紆余曲折あるのだ。
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