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ちーちゃんはちょっと足りない(著:阿部共美)【ただの読書紹介で読者から好感度を得ようとか、こいつ澄ましてるようで発想がいかついな】
一時期、みんなのトラウマとして少し騒がれていたマンガ作品。
物語にはテンプレと言える王道の展開があるんですが、
そういうのを片端から砕きまくって、まったくありえない方向へ向けてズレにズレまくった作品。一冊完結。
マンガを書くときに手加減せずに、マイワールドを炸裂させすぎると誰もついてこれなくなることがあるので、心もち手加減して世間に合わせるくらいの匙加減が必要な時があるのですが、
逆にそれをまったくやらないという系、いややってるのだろうか?
とにかくそれがスマッシュヒットしたという。
私がフォローしているnoterのマンガ家さんも、そんなことを書いていました。あの人がマンガ家として有名になっていたら、こんな感じなのだろうか?
手加減一切なし。
きらめく作者のセンスが核爆発している。
その汚染されたインプレッションを受けた我々は、二度と元の世界には戻れないのだ。
***
主人公は貧乏で気の優しい女子中学生ナツ。
友だちはキップが良い感じの頼りになる旭ちゃんと、
もうひとり、いかにも発達障害というか頭が弱いというか、おバカな子。
これがちーちゃん。
もっとも障害ではなくぎりぎり個性として扱われていますが。
この三人組は仲良しでした。
ちーちゃんが巻き起こすバカ騒ぎに、いつも賑やかです。
しかし。
主人公ナツとちーちゃんは貧乏家庭の出身でした。
お小遣いもあまりないです。
そんな中で、クラスメイトのお金が無くなる事件が起きるのです。
そこから常道をぶち壊す展開が始まる。
そしてずれた結末に至ると、
読者の心の中には、拭い去れないモヤモヤ感でいっぱいに満たされます。
やっぱり主人公はナツだった。
***
私は・・・・・・・・
ハッピーエンドだと思う。
このどうにもならない現実の中で、残念にも生き恥をさらすような形でも、それでも生きていかなくてはいけないのがリアルな人生なんじゃないか。
そしてそんな生にもささやかな幸福はあるのだ。
というかどれだけ残念な人生にも、誠に遺憾ながらささやかな幸福はついてきてしまう。
それが現実だ。
不幸な境遇に負けずに、元気いっぱいに明るく正々堂々と過ごしていましたなんて、言っちゃ悪いが、そっちの方がフィクションである。
子どものためではなく、大人が不安を抱かないためのそれは嘘だ。
阿部共実は嘘をついてない。
これでいいんだ。
私たちの胸が痛くなるのはそこで生きていたからで、嘘偽りなく真実に近づいた勇気こそがむしろ称賛されるべき・・・
・・・・と勝手に解釈。
いや、そんな解釈はどうでもいいんです。
いやまあフィクションなんだろうけど。
とにかく私たちが物語について考えている思い込み、こういうのを完全に壊してくれて、なおかつオチをつけてこれる作品。
これがすべてです。
こういうのは、AIには逆立ちしても書けまい。
というか理解できないだろう。(早くここまで来てほしいとも思う)
我々の醜悪な現実もメタ世界の誰かにとっては美しい果実なのだろうか?
そうなんだろうね。
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