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ガンスリンガーガール(著:相田裕)【マンガ紹介の人はいろいろと物を増やします。担当官の人が何かくれるみたい】

少女と銃とアクション。
似合わない要素を、どうやって整合性をつけるか。
まず少女はサイボーグだ。
不治の病とか、親に虐待されたとかの理由で、
死にかかっていた子供たちをサイボーグ化し、
テロリストと戦わせる闇の公安。
イタリア社会福祉公社。

少女たちにはもれなく、大人男性の教育係がつく。
もちろんエロゲ要素とかはなく、兄的な立場だ。
(一般誌なんで)

そんで教育係と、少女サイボーグの、2人組で基本的に戦っていく。
少女たちは洗脳されているので、教育係の言うことでないと、命令を聞いてくれない。

↑ アニメ化もされた。


ロリと銃アクションとしっとりファミリーロマンスを、
特殊な調味料で強引に、きちんとした一品に仕上げた作品。
一部で高い評価を受けるも、
「この強引な材料配合はなんだ!ケシカラン」
とお叱りを受けることもあった。

人間の業欲がソフィスティケートされた作品であったが、
それつまり良作ということである。
文化とはそういうものだ。

(さらにアニメ化でも一悶着あったらしい)

しかし、
このお話、最終的にダラダラとテロリストとの戦いが続いたあげく、
唐突に。

ヒロインの卵子が保存されていた、その子が大人になって、
その子は普通に健全な成長をして、
大学を卒業するみたいなシーンで終わる。

うーん。
これは期待外れだった。あらゆる意味で。
まあ、いいんだけど。
娘ちゃんエンドは、これはこれでいいんだけど。

↑ アニメ版はなんかあったらしい。

****

偉そうに高説垂れる気も資格もまったくないが。

この作品には、ここを改良すればもっと良くなる。
そう思えた点があった。
私がわかるのだから、作者や編集者にわからないはずがない。
大人の事情で封印されたのだろう。

惜しい。

1、

まず敵であるテロリストが、基本的に咬ませ犬であること。

要は最初から、やられる前提で出される雑魚なのだ。
中盤以降、多少は歯ごたえのあるテロリストも出てくるが、
少年マンガでよくある、得体の知れない中ボスとかよりも雰囲気がない。

本作は、どちらかというと、少女たちの日常が、
暴力と併存してしまう、
違和感の描写が売りになってる。

だから、敵は適当なやられ役で構わんという割り切りなんだろうけど。

もうちょっと背景を持たせれば、物語に深みを持たせることもできたはずだ。

2、

味方を倒さなかったこと。

よくよく考えてみれば、この社会福祉公社という組織。
子どもを改造して兵士にしているというナチス親衛隊もドン引きする鬼畜の所業を行っている組織なのである。
本来なら公社がラスボスになる展開まったなしである。
そこら辺の決着がつけられずじまいというのが、物語が不完全燃焼のまま終わってしまった要因でもあった。

ただおそらく、作者はこの点を踏まえてルートを考えていた。

それは、少女たちのひとり、クラエスとその相棒である先生の存在である。
先生は公社を告発するために離脱するのだが、始末されてしまう。
クラエスは、パートナーを失い、戦闘に適さなくなるので、
かわりに新型義体の換装試験用として残される。

なので作中には、他のヒロインとの話し相手としてしか出てこない。
クラエスの話はこれで終わりだが。

しかし、もうこの設定だけで、
この物語の着地点が見えている。

***

同じように、外の世界に公社の存在を告発する人間が現れればいい。
それはおそらく、主人公ペア3組のうち、どれかがやる。

残り2つのペアがそれを阻止する作戦に投入され、

最後に、2つから、もう1組が土壇場で裏切る。
「見逃してやれ!」
「お前も裏切るのか!」

その2組は、お互いに因縁の相手だ。
味方であるときから、因縁の相手だった。

男たちは、身内であっても本当の意味で相手の心を理解できていなかった。
少女たちは、日常パートでは最も仲が良かった。
だからこそ、宿命の対決となる。

こうして、公社の存在は全世界に開示される。

3組のペアが本作には出てくるのだが、
読んだ人には、どのペアがどの役回りをするのか。
もう想像がつくだろう。

もうね。全員のキャラ設定が、最初からこのエンディングに向けて落ちていくように、作られてるんだよ。それがわかるんだよ。

***

だけどなんでか、この結末は封印されて、
別の急ごしらえのエンディングに差し替えられた。
うーん。
まあ、別に文句を言うほどでもないけど。
伏線を張っておいて使わないでいるのは、
もやっとする。

ジョジョの奇妙な冒険でも、毎回もやっとしてるけど、
これも、同じくらいもやっとする。

***

本作は本来、乾いた血の匂いがするような作品である。
男たちも少女たちも、現実にはもはや帰還する場所がない。
戦いに生き、戦いに死す。誰に知られることもなく。
生きる理由を強引に後付けで、どうにかして見つけるしかないのだ。

それにサイボーグという接着剤を使うことで、
萌え要素を強引に付け足した。でも本質は変わらない。
付け足し要素はあくまでトッピング、スープはスープなのだ。

が、しかし。
この世界の何かが、スープをジュースにしてしまった。
そうしたことに意味はあるのだろう。
乾いた血の世界にするのは、読者層から受け入れられない。
そう言われたら仕方ないけど、後ろ髪を引く物語だった。

僕なら妥協しない。
(いや、そういうネタを作ってから言えってんだよ)


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