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ザ・トレンチ(1999年)【映画紹介も孤島じゃない。大陸なんだ】

イギリスの戦争映画。
第一次大戦のソンムの戦いを扱った作品で、
日本で同じ作品類型となると、
「ひめゆりの塔」とか「ビルマの竪琴」みたいな作品になる。

要は戦争の悲惨さを描いた反戦ものだ。

日本で戦争の悲惨さというと、
沖縄とかビルマとかフィリピンなんだけど、

イギリスだと第一次大戦のソンムの戦いとか、
あの辺になる。
恐ろしいことにイギリスでは、
第二次大戦の方が、被害が軽くて、

↑ 予告編は英語のやつしか残ってなかった・・・
雰囲気は低予算映画っぽい。

ソンムの戦いの時は、
村の若者が全滅して、若い男衆がいなくなってしまう。
といったことが頻発してしまい、
イギリス人に現代戦の苛烈さを思い知らしめた戦いなんだ。

ソンムの戦いの頃は、イギリスも著しく人命を軽視した戦い方をしていた。

申し訳ないが、本作については、
少しネタバレして面白さを紹介してみたい。













この映画「トレンチ」はよく出来ていて、
戦闘シーンがほとんどない。

攻撃前の、準備中の塹壕生活が全体の9割を占める。
新兵たちが配属され、塹壕の中に適応して、
仲間が死んだりして、それを乗り越えて、
成長していく青春物語が描かれ。

そしてラスト5秒で富野由悠季よろしく全滅するのである。
(いや富野監督は最終話をまるごと使うので、度合いはもっと急だ)

戦闘シーンは本当に、ラスト5秒くらいしかない。

というか、戦闘シーンがない。
戦闘シーンを描かない戦争映画で、
ひたすら攻撃前のシーンを描くだけで、
これだけ戦争の悲惨さを描いているのは稀有の作品じゃないかと思った。

いや、仲間が死ぬシーンが真ん中辺にあるけど。
それも、塹壕で仲間同士でバカやってるときに、
狙撃兵に仲間が撃たれるというシーンだ。

しかも直前に野原と鳥のさえずりで、
すさまじい平和感を印象付けた後に。

塹壕では外を見ちゃいけないのだ。
スナイパーが監視しているから。
外を覗いたら撃たれるに決まってる。

でも、若いから、バカだから、
外を見た。
そうしたら野原があって、
鳥のさえずりが聞こえた。
拍子抜けするほど平和な景色が広がっていたんだ。

なんだ。
思ったより怖くないな。





と思ってたら、
ぱん。
飛んできた歯が顔に貼りついて取れなくなり、
仲間が悲鳴。

怖い。上官がめちゃくちゃ怒る。
「これで満足かっ」
仲間は顎がないので、何を言っているか分からない。
すぐに死んだ。

そうやって成長(?)していく主人公たちが、
「お前は生き残る。長年やってるとな、見ればわかるんだ」
なんて上官に言われて、最後の戦いに。

直後に、何か音がして、画面が真っ白になって、
エンドクレジット。

うーん、これは怖い。
すごい演出だ。
当時は、特に消化試合的に見ていたけど、
戦闘シーンが極端に少ないせいで、逆に怖いというのが斬新だ。

残酷描写をさほど描かなくても、怖い作品は作れるのだ。
直接的に描写するよりも、よほど怖ろしい地獄を描いている。
ここまで振り切ったのは他に観たことがない。

その極度に振り切ったアウトラインを除けば、
若い男たちがバカやってるだけの場面が続くので、
割と単調で退屈だ。

ただ、そういうのは全部、仕掛けなんである。
退屈ながら日常感や成長物語を演出しつつ、
唐突にぜんぶなかったことにしてしまう。
その落差にすべてをかけた作品。

別に観なくてもいいけど、
こういうのがあるんだな、と知っておくのは悪くないと思う。
ま、退屈かもしれないので、強くは勧めない。

「1917」とかリメイク版「西部戦線異状なし」とかなら、
動画もあったんだろうけど。
とにかく、これが印象深かったので。
誰も知らないのを紹介してみたかった。

人は孤島ではない。大陸なのだ。
ひとり欠ければそれだけ世界は小さくなる。

確かこんな詩だったような。

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