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共感について考えていたら、自分の身勝手さに気づいた話

似ているから惹かれるのか、まったく違う二人だから惹かれるのか。夫婦は似てくるものだというけれど、もともと似ていた二人が結婚したのか、それともまったく違う二人だったのか。

最近、読み続けているアガサ・クリスティーの『未完の肖像』で、夫婦の行き違いのようなものが描かれていて、夫婦について考えていた。

といっても、そんなに大それたことを考えてはいない(私は難しい話が苦手)。
本に登場する、共感して欲しい妻と、「共感って何?それが何になるの??」という夫。二人が食い違っていく様が、非常に興味深いと感じただけ。

女性は共感して欲しい生き物だと、よく聞く話だし、実際に私も(おそらく生物上は女性なので)共感して欲しい気持ちが普通にあると思ってる。ただ、すべての人に共感してもらえるとも思わないし、私自身もすべての人に共感できるとも思っていない。

けれど、共感して欲しい相手が自分の大切な人だった場合には、共感してもらえないと「なぜ??」という気持ちにはなる。
その「なぜ??」が『未完の肖像』には描かれていて、しばらく実家に帰っていた妻が帰宅したとき、妻は夫に「さびしかった?」と聞く。しかし夫は「さびしいかどうか考えて、それがなんになるの?」みたいなことを言うのだ。

その夫曰く、さびしいと感じたところで妻が帰ってくるわけでもない。だったら考えても無駄だから、さびしいとか考えなかった、というような話で、私はこの夫の気持ちはよく分からないけれど、言わんとしていることは分からんでもないなぁと思った。

考えても仕方がないことは考えない。それは言われてみれば当たり前のことだし、妻がいないことを悲観して涙にくれるなんて夫であれば、妻は嬉しいと感じるのかと言われたら、それはたぶん違うだろうとも思う。いや知らんけど。夫に大泣きして欲しい!!!と願う妻も、そこそこいそうではあるよね、いや知らんけど。

『未完の肖像』の妻は、夫に「さびしかったよ」とただ言ってもらえさえすれば、それで気持ちが落ち着いたんだろうと思う。自分がこの世にいることで、喜んでくれる人がいるという事実が欲しかったんじゃないかなと思う。たぶんね。知らんけど(「知らんけど」で断言をさける卑怯さを連発)。

この『未完の肖像』に登場する夫は、妻や子どもの気持ちなどに興味がなくて、「現実しか見ていない」と書かれていた。自分の気持ちに興味のない夫という時点で、私はショックを受けそうだけど、実は我が夫も同じような感じで人に興味がない人なもんだから、この『未完の肖像』の妻の気持ちをとても他人事だと思えなかった。

でもこの「現実しか見ていない」というのは大事な部分でもあって、過去の失敗を今でも思い出して恥ずかしい!!と思ったり、未来に起こるかもしれない不安なことをたくさん思い浮かべて一人でアタフタするような私にとって、この「現実しか見ていない」というのは欲しくてたまらない能力だったりする。

過去や未来に翻弄されて、考えなくても良いことに集中しすぎる私は、「あれ?私が生きている今っていつだっけ??」みたいな脳内バグが起こりまくるし、この「考えなくても良いことを考えてしまう」というこれだけで一日のパワーを失っているとも感じている。ムダに疲れているだけとも言う。

一方の我が夫は、今の自分が出来ることを淡々としていけばいいという姿勢で生きている。何でも過剰に反応してしまい、一人でパニックを起こす妻に対していつもフラットな対応をするのだけど、結婚初期のころは「夫はどうして共感してくれないのだろう?」と不思議に思ったこともあった。

しかし、もしも夫が私と同じように、過剰な反応をしていたらどうなっていただろうか?
お互いにパニックになるだけで、事態は収拾がつかずにとんでもない状況を招いていたのではないだろうか?という気がする。台風が接近すると聞いただけで、防災リュックを100個ぐらい注文してしまいそう。100個もどうやって運ぶの?100個注文しても、家に届くころには台風が通り過ぎてるんじゃない?といった問題点にはまったく気づくことがなさそう。


共感はしてもらえたら嬉しい。けれどそれは、自分にとって都合のいい場合にだけ、都合のいい対応をして欲しいという、身勝手さが思いっきりあるんだろうなと、今回『未完の肖像』を読みながら、夫婦関係について思いをはせて自分なりに気づいた事実だった。

自分の身勝手な思い込みを相手にぶつけて、相手にも同じようにしてほしいと求め過ぎれば、その先はどうなるのか・・。
とりあえずまだ『未完の肖像』は途中までしか読んでいないのだけど、さっきAmazonのあらすじでネタバレを見てしまい困惑している。今後、この夫婦がどうなるのかを最後まで見ていきたい。

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