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それは人格のせいじゃなかったのかもしれないなんて

相変わらず、佐渡島庸平さんの『観察力の鍛え方』を読んでいる。

読み進めれば読み進めるほど、いままでの自分がいかに歪んだ物の見方をしていたかを思い知らされてしまい、猛烈にいたたまれない気持ちになっている。

たとえば、子どもに怒ってしまうとき。
佐渡島さんには3人の息子さんがいるらしいのだけど、アレルギーがあって癇癪がひどい長男に手を焼いていると書かれていた。

話し合いができない状態になった息子さんにたいし、佐渡島さんは
「この家に住み続けたいなら言うことを聞きなさい」
とか、怖い顔をしたり抑えつけるなどの恐怖を使ったりして、息子さんをコントロールしようとしていたらしい。

しかし佐渡島さんは気づく。
息子さんが暴れているときは、アレルギーがひどいときだったということに。

「癇癪がひどくて暴れてしまうのは性格のせい」にしてしまうと、将来困ることになるだろうと親は思ってしまう。
大人になっても癇癪を起こして、他者に八つ当たりするようになったら困る。
だから子どものうちに、その性格を正していかないといけないと思ってしまう。
しかしそれは決めつけであって、事実ではない。

本当は人格の問題ではなく、別に問題があるはずなのに、問題の原因をその人の性質に求めてしまう。

『観察力の鍛え方』より引用

「根本的な帰属の誤り」と呼ばれるバイアスによって、物の見方をゆがめている可能性があるのだと『観察力の鍛え方』には書かれていた。

「根本的な帰属の誤り」って何?と思って検索したら、

根本的な帰属の誤り(こんぽんてきなきぞくのあやまり)は帰属バイアスの一種であり、個人の行動を説明するにあたって、気質的または個性的な面を重視しすぎて、状況的な面を軽視しすぎる傾向を言う。

と出てきた。

イライラしている上司に対して「あの人は怒りっぽい」と思うことは、バイアスによって物の見方がゆがんでいる可能性がある。
イライラしている上司はもしかしたら、仕事を抱えすぎて身動きが取れなくなっているだけかもしれない。
もしかしたら、体のどこかが痛くてイライラしているのかもしれない。

本当に怒りっぽい人もいるけれど、怒りの原因がその人の性格なのか、それとも状況がそうさせているのかは、即座に判断できるものじゃない。


これを受けて、私自身も娘のひどい癇癪を「性格のせい」だと考えていたことに気づいた。
娘には障害があって、それが原因となって癇癪を起している場面も多々あるけれど、障害や性格のせいにして、親としてできることを考えてこなかったのではないかと気づいてしまい、恥ずかしいやら情けないやらで思いのほかダメージを受けてしまった。

こういうバイアスを使って「わかったつもり」になるほうが、簡単に「安心」できたという過去が人類にはあるらしい。
肉食動物から身を守るには、即座に状況を判断する必要があるんだけど、その判断をくだすためには、バイアスを使うほうが都合が良かったらしい。

そういう歴史があるので、人はバイアスを使って即座に判断をくだし「安心」を得ようとしているのだと本に書かれていた。
たしかに「安心」はすぐに欲しい。
不安は1秒でも短いに越したことはないもの。

ただそうやって即座に判断することをくり返していれば、事実を手に入れることはできない。
事実がわからないままでいれば、望まない未来を手に入れることにもなる。

たとえば私の場合、娘の癇癪を「性格のせい」だと決めつけて、娘の気持ちに寄り添ってこなかったので、娘からの信頼はゼロに近い。
娘がなぜ癇癪を起こすのか、その原因をもっと考えてみれば良かったと、この本を読みながら思った。

トラブルが起きたときに、ある個人が悪いと思ったら、根本的な帰属の誤りが起きている。個人に悪意はなく、責任はないとした場合、原因は何だろうかと問う。

『観察力の鍛え方』より引用

この「個人に悪意はなく」の部分が心に刺さる。
娘が癇癪を起こすのは、悪気があってやっていることじゃない。
上手く体を使えない状態になれば、誰だってイライラするだろう。
そんな当たり前のことに思いをはせることもなく、ただただ癇癪を起こされることがしんどいとばかり思っていた。
私は娘の辛さよりも、自分のしんどさにしか目を向けてこなかったのだな、と改めて気づいた。

「根本的な帰属の誤り」を知ったいまは、原因が何かを問うことをしていきたいと思う。
とはいえ、すぐにできるようになるとは思えず、きっと私は怒ったり途方に暮れたりするんだろうなと思う。

ただ忘れないようにしたい。
問題の原因は人格ではないかもしれない、という可能性を。


『観察力の鍛え方』は、とても勉強になる。
何度も読み返したい一冊になりそう。

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