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「推しへの愛情」の優劣について考える

最近になってまた、「自分は推しへの愛情が足りていないのではないか?」「みんなに負けているのではないか?」という嘆きを目にすることが増えた。
我々はオタクなので、コンテンツや推しには大なり小なり愛を持っている。しかし、それが「可視化」されることがあり、つい自分と比較してしまうのである。

可視化の対象としては、グッズの多さ・レアリティ、推しからの認知、ゲームなどの強さ、費やした金額、経験(ライブ参加、聖地巡礼など)の数などが挙げられる。経験や金額は、愛情あるいは情熱の見えるパラメータとして、比較対象になりやすい。

なるほど、ではラブライバーの私は…

・グッズ…ほとんど集めない。
・認知…いらないと思っている。リプもあまり送らない。
・金額…あまりかけない。
・経験…ライブは年1回程度

ちょっと待って。最底辺じゃねーか!!
最弱オタクなのに一丁前に文句を垂れているので、底辺どころか害悪レベルかもしれない。なんだこいつ。

というのはさておき。
上の嘆きを受けて私は、「推しへの愛情は比較できるものではないし、優劣もない」ことを強く主張したいのである。いや、言い訳ではなくてね…

私はこのことを、古参オタクから教わったのである。

もう十数年前の話になるのだが、私はかつて…いや今もマクロスFの沼にハマっている。
それと同時に、SNSにもすごくハマっていた(旧Twitterではない)。当時は若かったから、相当な迷惑をかけてきたし、うんざりするほど生意気だったと思う。今の私だったら相手にしていないと思う。

マクロスFは学園モノでもあるため、同志は私と同年代も多かった。しかし、それ以上におじさんが多かった。1982年から続くロボットアニメなのだから、そりゃ多いに決まってる。

おじさんたちは、私たちに親切にしてくれた。知らないことはよく教えてくれたし、社会人とは何たるかを生活スタイルをもって感じさせてくれた。
今思うと、やたら親切だったのは若者ファンが増えたことによる嬉しさというか、「囲い込み」だったのだろう。打算的なものもあっただろうが、私はおじさんたちを尊敬していた。

そんなある日、おじさんたちに確か「僕たちなんて、にわかのペーペー野郎ですよね」的なことを話したことがある。生意気なりに、経験の量や深さにおいておじさんたちに敵うことはない…という、諦めもあった。

それを受けておじさんは、こう語りかけてきた。

「ファンに古参も新参も関係ないですよ。一緒に楽しみましょう」

これを聞いた時、私は痺れた。心の底から「カ、カッケェ〜!!!!」と思ったのを覚えている。
「古参も新参も関係ない」という意見自体は、よく耳にする。しかし、かなり歳の離れた、ダントツで知識も経験もあるおじさんがこう言うのだから、本当に粋だなと思ったのである。しかもこんな、クソ生意気なガキに対して…。長年オタクを続けたプライドもあると思うので、そう簡単に言えないセリフだ。
私はいたく感銘を受け、以来この言葉を胸にオタク人生を歩んでいる。

私がこの言葉から感じ取った教訓は、以下の通りだ。

・そのジャンルが好きなもの同士、優劣はない。何かを競ったり、比べたりすることは無意味である(競技である場合を除く)。

・対等であるからして、自分が及ばないと思ったジャンル、新参のジャンルについても生意気かつ積極的に好きを発信して良い。もっと知りたければ謙虚に熟練者に聞き、学ぶ。

・古参であっても新参と対等なのだから、仮に初心者が現れてもえらぶったり、圧力をかけたりしない。また、何かを聞かれたら丁寧に答える。

私も未熟なので完璧にできているとは言えないが、常に心がけていることだ。
ちなみに、この記事を書くにあたり、おじさんのページを覗きに行ったが、今もアニメブログを更新していた。好きがブレていないのが、相変わらずかっこよかった。

さて、そうは言ってもやはり人望を集めるオタク、影響力のあるオタクもいる。
そういった人と比べて自分は…と卑下する向きもあるかもしれない。こうした「可視化されないパラメータの高いオタク」は、何が秀でているかも少し考えてみた。

私が思うに、それは「愛」なのではないか。
…などと言うと、序盤の話と矛盾するように思われるが、ここで言う「愛」とは、コンテンツ以外、つまり人や二次創作にも向けられる愛である。

正直言って、オタクコンテンツは現状どこまで突き詰めても娯楽である。これで仕事したり、社会的なステータスを得たり、飯を食っていけたりするのはほんの一握りか業界人くらいのものである。

コスパでいえばそこそこ最悪な趣味において、愛を無尽蔵に注げる人、あるいはコンテンツの枠にとどまらず同好の士にも愛を注いだり、自分のスキルを注ぎ込んだり、コンテンツの愛を原動力に何かに打ち込み、それを還元したりするオタクは尊敬を集めやすいのだと思う。まあ、それなりの人格や冷静さも必要だと思うが。

かつてのおじさんがそうだった。私もクソ生意気な時期に、おじさんからの愛(というと気持ち悪い?)を受け取った側である。いよいよ年長に差し掛かろうかとする時期、今度は私が愛を返す時期なのかもしれない。

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