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映画めも。

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観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
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#映画

【映画】ショウイング・アップ Showing up/ケリー・ライカート

【映画】ショウイング・アップ Showing up/ケリー・ライカート

タイトル:ショウイング・アップ Showing up 2022年
監督:ケリー・ライカート

ケリー・ライカートの作品を初見で観終えるたびに、心の奥にもやもやとする感情が湧き上がる。その湧き上がったものを言語化出来ず、的確な言葉が頭に浮かばずさらにもやもやする。彼女の映画には特別な風景や人、物語があるわけでもないし(その反面今まで描かれなかった事柄が多分に含まれている)、映画の中で見慣れたモチーフ

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【映画】枯れ葉 Kuolleet lehdet/アキ・カウリスマキ

【映画】枯れ葉 Kuolleet lehdet/アキ・カウリスマキ

タイトル:枯れ葉 Kuolleet lehdet 2023年
監督:アキ・カウリスマキ

引退を撤回しての六年ぶりの新作ということもあって、いつにも増して話題に上がっている。サービスデーに行ったため劇場はほぼ満員。カウリスマキの近作でここまで混んでいた印象が無かったのと、老若男女幅広い世代が詰めかけていた感じだった(とはいえ上の世代が多め)。
正直なところ「街のあかり」以降のカウリスマキ作品は笑い

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【映画】王国(あるいはその家について)/草野なつか

【映画】王国(あるいはその家について)/草野なつか

タイトル:王国(あるいはその家について)2019年
監督:草野なつか

ドキュメンタリーでありフィクションであり、映画であり演劇のようでもある。声が主体でもあるのでラジオドラマのようにも聞こえる。いち場面が繰り返され、何度も同じ場面を観ているとループもののような錯覚を覚えてくるが、単純にメタやポストモダンと切り捨てるのとは違う感覚が芽生えてくる。言葉にしようとすればするほど、途端に本質から離れてい

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【映画】モナ・リザ・アンド・ザ ・ブラッド・ムーン Mona Lisa and the blood moon/アナ・リリ・アミリプール

【映画】モナ・リザ・アンド・ザ ・ブラッド・ムーン Mona Lisa and the blood moon/アナ・リリ・アミリプール

タイトル:モナ・リザ・アンド・ザ ・ブラッド・ムーン Mona Lisa and the blood moon 2022年
監督/アナ・リリ・アミリプール

もしこれが邦画だったらタイトルやポスターヴィジュアルの印象から、ハズレだろうなと興味が沸かなかったかもしれない。そういった前提であまり期待せずに観たのだけれども、意外と程よく余韻が残る映画だった。
スリラー映画みたいな始まりから、話の展開が一

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【映画】ファースト・カウ First  Cow/ケリー・ライカート

【映画】ファースト・カウ First Cow/ケリー・ライカート

タイトル:ファースト・カウ First Cow 2019年
監督:ケリー・ライカート

ロングライドとグッチーズスクール主催の最速試写で鑑賞。中々上映されずやきもきしていたが、A24の世間的な注目の高さもあってやっと公開されたのかもなんて思ったりするが、ともあれ上映が決まったのは喜ばしい。

伊丹十三ディスというわけではないだろうが、「たんぽぽ」のヒットとテーマに辟易としたライカートの発言は面白

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【映画】シック・オブ・マイセルフ Syk Pike/クリストファー・ボルグリ

【映画】シック・オブ・マイセルフ Syk Pike/クリストファー・ボルグリ

タイトル:シック・オブ・マイセルフ Syk Pike 2022年
監督:クリストファー・ボルグリ

本作は「わたしは最悪。」のオスロピクチャーズ製作で、かつ次回作「Dream Scenario」はアリ・アスタープロデュースでA24製作ということで俄然期待が高まるクリストファー・ボリグリ監督。いやはや北欧の映画ってなんで人間の根の暗さが如実に出るものが多いのか。先日の「イノセンツ」もフィジカルな痛み

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【映画】栗の森のものがたり Zgodbe iz kostanjevih gozdov/グレゴル・ホジッチ

【映画】栗の森のものがたり Zgodbe iz kostanjevih gozdov/グレゴル・ホジッチ

タイトル:栗の森のものがたり Zgodbe iz kostanjevih gozdov 2019年
監督:グレゴル・ホジッチ

土葬のように落ち葉で埋められる栗。前時代的な生活を送る打ち捨てられようとされる誰も見向きもしない村に暮らす人々。若い世代は村の外へと移住し、残された人はそこに暮らすか移住を試みるかのどちらかなのだけど、村から出るにもお金がいる。村の収入源のひとつだったと思われる栗は、無用

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【映画】オルエットの方へ Du côté d'Orouet/ジャック・ロジエ

【映画】オルエットの方へ Du côté d'Orouet/ジャック・ロジエ

タイトル:オルエットの方へ Du côté d'Orouet 1971年
監督:ジャック・ロジエ

改めて感じたのがヴァカンスを題材にしたフランス映画の多い事。ロジエのヴァカンス映画に最も近いのはエリック・ロメールの諸作だと思うのだけど、劇中で夏場の南仏は最低という台詞から「緑の光線」での鬱々とした上手くいかないヴァカンスが頭をよぎる。先日久しぶりに再見したオゾンの「まぼろし」にしてもある種のヴァ

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【映画】エドワード・ヤンの恋愛時代  A Confucian Confusion 獨立時代/エドワード・ヤン

【映画】エドワード・ヤンの恋愛時代 A Confucian Confusion 獨立時代/エドワード・ヤン

タイトル:エドワード・ヤンの恋愛時代 4Kレストア A Confucian Confusion 獨立時代 1994年
監督:エドワード・ヤン

それにしてもよく喋る。畳み掛けるように目まぐるしく会話が続いて、会話は軋轢を生み出し、他の誰かに影響が回り回って、それがぐるぐると回り続ける。徐々にズレていく人と人との関係が、最初の一時間まではただひたすら人々がすれ違っていく様に、これは一体何の物語なのか

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【映画】アステロイド・シティ Asteroid City/ウェス・アンダーソン

【映画】アステロイド・シティ Asteroid City/ウェス・アンダーソン

タイトル:アステロイド・シティ Asteroid City 2023年
監督:ウェス・アンダーソン

相変わらずの徹底した構図とカラーリング、書き割りのような景色がいかにもウェスな感じ。なのだけど一本調子で物語としてはすごく単調だった近作に比べると、入れ子構造の本作は中々に複雑。「アステロイド・シティ」という舞台を作るまでの過程がモノクロームで描かれながら、それと並行して「アステロイド・シティ」の

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【映画】魂を救え La sentinelle/アルノー・デプレシャン

【映画】魂を救え La sentinelle/アルノー・デプレシャン

タイトル:魂を救え La sentinelle 1992年
監督:アルノー・デプレシャン

画一的なジャンル映画に陥りまいとする作風というか気概を感じられたが、後から長編デビュー作と知り驚く。物語の大枠の主題としては、医学生が事件に巻き込まれるサスペンススリラーの体を取りながら、後半1時間で物語が大きく様変わりする所は、物語を何か見落としたのか?と錯覚するほどにいきなり突き放される。終幕に向けて徐

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【映画】フリークオルランド・タブロイド紙が映したドリアン・グレイ/ウルリケ・オッティンガー

【映画】フリークオルランド・タブロイド紙が映したドリアン・グレイ/ウルリケ・オッティンガー

タイトル:フリークオルランド 1981年
監督:ウルリケ・オッティンガー

五つのエピソードが脈絡なく紡がれ、過去の話なのか、近未来なのか、それとも神話の世界なのかがイマイチ判別出来ない。なのにのっけから、だだっ広い荒野の中にぽつんとある人の木と、Freak Cityと書かれたネオンのアーチが輝く異様な世界に惹きつけられる。ここにある映像が醸し出す面白さは、理屈で語りにくい。エピソードごとにキャラ

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【映画】バーナデット ママは行方不明 Where’d you go Bernadette/リチャード・リンクレーター

【映画】バーナデット ママは行方不明 Where’d you go Bernadette/リチャード・リンクレーター

タイトル:バーナデット ママは行方不明 Where’d you go Bernadette 2019年
監督:リチャード・リンクレーター

ビフォアシリーズのリチャード・リンクレーターによる家族ドラマなのだけど、とにかく異才を放つケイト・ブランシェットの演技の凄さが際立つ。彼女はトッド・フィールドの「Tar ター」の時と同じ様に、破天荒な天才の物語がぴったりハマる。しかも自信過剰で男性勝りな「Ta

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【映画】ソドムの市 Salò o le 120 giornate di Sodoma/ピエル・パオロ・パゾリーニ

【映画】ソドムの市 Salò o le 120 giornate di Sodoma/ピエル・パオロ・パゾリーニ

タイトル:ソドムの市 Salò o le 120 giornate di Sodoma 1976年
監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ

胸糞というかスカトロジーを含むアンチモラルが、今観ても胸焼けや嗚咽を誘引するほど徹底して描かれる。表面をなぞれば露悪的で背徳な描写の連続で、山盛りの排泄物のダイレクトな表現の捻りのなさに、一体何を考えてるんだ?と眉をひそめる。性的な描写も、処女姦通からアナルセック

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