フランス総選挙の結果とマーケットへの影響
フランスの総選挙が2024年7月7日に行われ、その結果が注目を集めています。メディアではルペン氏が率いる国民連合が注目されていましたが、結果としては左派連合が第一政党となり、国民連合は予想外の三番手に終わりました。市場関係者もこの結果に注目しています。
左派連合の影響
左派連合の中には財政拡大を主張する極左政党も存在するため、フランス国債が売られ、ユーロも売られる可能性があります。しかし、左派連合の中でも意見がまとまらないだろうとする声もあり、政治的な停滞の中で、マーケットは一時的に落ち着くという見方も存在します。市場関係者の見解も分かれています。
選挙結果の詳細
フランスのメディアが伝えているところによれば、今回のフランス総選挙の結果、左派連合が約180議席を獲得し、第一党になったとのことです。次いで、マクロン氏が率いる与党連合が約150議席、ルペン氏が率いる国民連合が約140議席で、どのグループも過半数を取ることはできませんでした。
ルペン氏の国民連合が第一党になるという予想が注目されていましたが、サプライズな結果となりました。左派連合と与党連合が協力し、お互いに勝ち目のない候補を撤退させるなどして候補者調整を行った結果、左派連合が勝利しました。
マーケットへの影響
この結果を受けて、一部の欧米の投資銀行はすぐに「ユーロ安だ、フランス国債が売られるぞ」というレポートを出しました。これは、左派連合を構成する一部の政党が財政を悪化させる政策を行うと言っているからです。フランスでは少子高齢化などで年金制度の維持が難しくなってきており、マクロン大統領が年金制度改革を進め、年金の支給年齢を引き上げてきました。しかし、一部の政党はこれを元に戻すだけでなく、さらに年金開始年齢をこれまでよりも引き下げると主張しています。
過半数割れ
左派連合は今回の選挙で勝つために協力したものの、その中での意見はまとまらないだろうという見解もあります。左派連合の中には大統領の権限の縮小や労働者の権利強化などを訴える極左政党から、いわゆる中道派の社会党まで複数の政党が存在します。選挙協力は行いましたが、一緒に政権運営を行うのは難しいという見方があります。
左派連合は過半数を持っていません。そのため、極端な法案は通せないということで、結局懸念されているような極端な財政悪化などは起こらないだろうとされています。
政権運営の見通し
政権運営についてはこれからどうなるか、まだ不透明ではありますが、一部の見方としては、左派連合が分裂してマクロン政権率いる与党と合流する可能性もあるという見方もあります。しかし、どのような政権が誕生するかはまだ不透明な状況です。このような状況はしばらく続くと見られます。
首相については、第一党から選出されるのが通例であり、左派連合から首相が選ばれることになります。その結果、首相と大統領がそれぞれ別の派閥に所属する、いわゆる「コアビタシオン」(同性、同居の意味で、別の派閥に属する首相と大統領が国政で同大統領が国政で同居する状況)になると見られています。
このような状況になると、おそらく色々なことが決められないということになり、フランスは政治的に停滞する可能性が高いでしょう。ただし、停滞するということで極端な財政悪化もないという意味で、過度な悲観が後退すれば、国債は買い戻し、ユーロも一旦ショートカバーになりやすいという見方もあります。
短期的な見通し
フランスやユーロにとってポジティブな結果ではなかったと思いますが、ショートカバーで値を戻す展開になりやすく、これが目先のマーケットの反応になると見ています。
長期的な見通し
一方、もっと長い目で見た時には、6月の欧州議会選挙で右派が対立し、欧州各国で右派が影響力を伸ばすという見方が広がったわけですが、今回の選挙結果を受けてその勢いは一旦落ち着くことになりそうです。
次の欧州政治の大きなイベントとしては、2025年のドイツの議会選挙が控えています。ドイツでも右派との対立が注目されていましたが、今回のフランス総選挙の結果がドイツにも一定の影響を与えるでしょう。
ただし、今回の結果でルペン氏や国民連合、そして欧州で対立してきている右派が終わったとは私は全く思っていません。今回のフランス総選挙左派連合の影響力が強まったとしても、マクロン氏も左派連合もどちらもダメだということになって、2027年に予定されているフランス大統領選挙でルペン氏が再び注目される可能性も全然あると私は見ています。
政権運営の未来
ここからフランスでどういう政権が誕生するのか、政権運営がどの程度混乱するのか、その辺りも注目になっていきそうです。一旦はフランス国債やユーロにとっては買い戻しになるかもしれませんが、長期的にはあまり強気の見通しは持っていません。以上が、フランス総選挙の結果とマーケットへの影響について、現在分かる範囲での解説です。今後も引き続き、よろしくお願いいたします。
ご参考