小林 真生 編著『レイシズムと外国人嫌悪』

しばらく前のことなのであまりよく覚えていないのだが、入管問題か何かの本の感想を書いたときに「荒らし」の方からコメントを頂いたことがある。
以前、筑波大学の東野篤子先生が、twitterで噛みついてくる「荒らし」の人に対して、その都度精力的に対応されているのを拝見してびっくりしたが(現在は東野先生はtwitterへの新規投稿を停止されている。)、僕はとてもじゃないがそんなことはできない。
個々の「荒らし」の方のコメントにその都度対応することはできないが、遅ればせながら本書の感想を書くことで、以前コメントしてくれた「荒らし」の方へのリプライとしたい。/

【レイシズムは「人種、言語、文化、宗教、社会的位置によって生じる差異に否定的な位置づけを行うこと」と定義づけられる。】(小林真生「レイシズムと外国人嫌悪」)

【「戦後日本では植民地期の思想、もしくは考え方に基づいた制度についての自省を含めた捉え直しは行われてこなかった」】(同上)


【フランスでは刑罰の対象になる人種主義、歴史修正主義の不法な発言が、日本では何の法的規制も受けず、野放しにされていることに気づくだろう。(略)だが欧州なら全土を震撼させるほどの石原の憎悪発言を問題としない大多数の有権者の意識が、ヘイトスピーチの続発と拡がりを許し、公然とジェノサイドが唱えられる社会をもたらしたのではないか。】(岡本雅享「日本におけるヘイトスピーチ拡大の源流とコリアノフォビア」)

ちょうど今、フランスの議会下院の選挙で1回目の投票が30日行われ、極右政党の国民連合が1位となり大きく躍進するらしいが、日本の自民党はフランスへ行ったら、国民連合も真っ青なウルトラハイパー右翼なんじゃないの?/

2011年、国連「移住者の人権に関する特別報告者」は、日本で人種主義や外国人嫌悪が拡がり、人種主義的な団体が外国人に対する差別的で攻撃的なデモを繰り返していることに憂慮を示し、日本は人種主義、人種差別と外国人嫌悪を防止・撤廃するための国内法を、早急に制定すべきだと勧告した。/


【萱野稔人は、ナショナリズムの最も基本的な原理は「国家は我々国民のものである(べきだ)」というもので、そう主張したとたん、「我々のものである国家から、国民でない人間が恩恵を受けることは許せない」という排除の論理が生まれるとする。(略)萱野はまた、国内の格差が拡がれば拡がるほど、社会のなかで「日本人」というアイデンティティが強調され、それを拠り所にする傾向が強まってくるという。】(同上)


【さて、戦前から戦後に「朝鮮人」蔑視が続いてきたことについては、本稿で主張してきた。しかしそれは同時に、国民国家の成立とは根本的にレイシズムを内包しているものではないか、という疑問も生じる。すなわち人種主義システムというものは国民国家成立のシステムと同義のものといえるのではないか。】(佐々木てる「近代日本の人種差別と植民地政策」)


【ナチスの扇動のもとに、ユダヤ人迫害というレイシズムの火付け役となった人びとを、アーレントは階級脱落者としての「モッブ」であるとしている。アーレントによれば、モッブは社会のあらゆる階級からの脱落者であり、社会からしめだされており、自分たちを指導しうる強力な人間のあとを喝采しながらついていくことしかできない。その典型は(略)突撃隊の隊員たちであり、「失業、社会的根無し草、フラストレーション」を特徴としていた。】(駒井洋「ナチスによるユダヤ人迫害から得られる教訓」)

【階級脱落者の社会心理的特徴としては、社会的地位の低落により自分を締め出した社会にたいする強烈なルサンチマン(うらみつらみ)の感情を保有していることがあげられる。そのため、強い力をもつ指導者に盲従しながら、特定の弱い対象をスケープゴートにしたてそれを攻撃することによりうっぷんを晴らそうとするのである。】(同上)

僕は、彼らを見るといつも、芥川龍之介「蜘蛛の糸」のカンダタを思い出してしまいます。/

【一般大衆のレイシズムへの加担は、(略)消極的なあきらめの態度でナチ政権に屈服し、迫害の無関心の傍観者となることによりなされた。】(同上)


【日本は、人種差別撤廃条約第4条(c)を留保していない。これは、「国または地方の公の当局あるいは公の機関」による人種差別の助長や扇動を禁止するための措置を求める規定であり、公の立場にある人間が差別的発言をした場合には、政府は、(略)行政的あるいは法的措置を講じなければならない。
だが、(略)政府は「人種差別の助長等の意図を有する行為」のみが対象であり、「そのような意図を有しない行為」は対象外であるとして、(略)公人の差別的発言に対してこれまで何ら対応をしていない。】(鈴木江理子「新たな在留管理制度に内在する構造的暴力」)

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