『佐田稲子傑作短篇集 キャラメル工場から』
佐田稲子の「キャラメル工場から」のことは、たぶん五、六年前の「夏の文学教室」で聞いたのが初めてだと思う。
講師は中島京子だったと思うが、とてもほめていた記憶がある。
ところが、僕のような天邪鬼の場合、誰かがほめていたということが、返ってその作品を評価する際のバーを数センチだけ押し上げてしまうことがある。
どうやら、今回もそのシステムが作動したようだ。
というわけで、僕には世評ほど素晴らしい作品とは感じられなかった。
貧しい少女が主人公の初期の作品などは違和感なく読めるのだが、