たとえばあなたがずっと壊れていても / 映画『ラストマイル』を観て
あぁ。世界って、とっくに壊れていたんだ。
最近、やたらと "失われたもの" ばかりが目につく。それはおそらく、私が生まれた頃にはほとんど、なくなっていたもの。
誰かの発展のために、世界が手放してしまったもの。
*
昨日、「やっぱりそうだよね」って心の栄養だなと思った。
心がつく安堵のため息。
それは、世界のベルトコンベアとはたぶん外れた、私だけの当たり前を誰かと共有し合えた瞬間に訪れるもの。
世界のスピードについていけないこと
誰かの言葉を上手に聞き流せないこと
たとえ「世渡り下手だ」と揶揄されたって、しょうがないじゃないか。だって世界の常識じゃないとしても間違いなく、私の世界の "本当" なんだから。
それが否定されると苦しい、苦しい。でも苦しみ続けることなんてできなくて、いつしかなかったことにしてしまう。
だからこそ、「やっぱりそうだよね」は枯れかけた心に水をくれる。大事なものを思い出せる。一人じゃないって事実が「それを大事にしていいのだ」と、勇気をくれる。
あなたがそうだと嬉しい。
だから私も、二人目になりたい。
それでもベルトコンベアに乗って頑張る人のことは、「どうか転んで怪我しないで」と祈りながら見送ってきた。
*
映画『ラストマイル』のエンドロール。
どうしようもなく涙が止まらなくなった。
作中に出てくる絶望があまりにも深くて。それに度合いこそ違えど、それが私の知っている、周りにも溢れ返った嘆きだったから。
私はマイノリティなんかじゃなかったのかもしれない。あの苦しみは麻痺させているだけで、誰しもが持っているものなのかもしれない。
だけど
それに気づけたとて、どうすりゃいいんだ。
気づかせた瞬間に、転んで怪我するかもしれない。きっとそれくらい四方をガチガチに固められた人が、世界にはたくさんいるのに。
……
それでも
「やっぱりそうだよね」がここにもあった。
映画の中に差した一筋の光は、私が大事にしたいものとおんなじだった。やっぱり見失いたくなくて、これ以上世界にも手放さないでいてほしいもの。
なくさないでいようよ。
失くしたなら、探しにいこうよ。
ひとりいれば、きっとふたりになっていくから。
*
世界はとっくに壊れていたのかもしれない。
だけどまだ回り続けてる。
大事なものを隠し持って。
がらくただっていいじゃないか。
失くしたままより、ずっと。