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たとえばあなたがずっと壊れていても / 映画『ラストマイル』を観て

『ラストマイル』を観た後の感覚を勢いで書きました。ネタバレはないけれど、まっさらな気持ちで観たい人は、その後に語り合いましょ。


あぁ。世界って、とっくに壊れていたんだ。


最近、やたらと "失われたもの" ばかりが目につく。それはおそらく、私が生まれた頃にはほとんど、なくなっていたもの。

誰かの発展のために、世界が手放してしまったもの。

昨日、「やっぱりそうだよね」って心の栄養だなと思った。

心がつく安堵のため息。

それは、世界のベルトコンベアとはたぶん外れた、私だけの当たり前を誰かと共有し合えた瞬間に訪れるもの。

30人いれば一人はいるマイノリティ
いつもあなたがそのひとり
僕でふたり

がらくた/米津玄師

世界のスピードについていけないこと
誰かの言葉を上手に聞き流せないこと

たとえ「世渡り下手だ」と揶揄されたって、しょうがないじゃないか。だって世界の常識じゃないとしても間違いなく、私の世界の "本当" なんだから。

それが否定されると苦しい、苦しい。でも苦しみ続けることなんてできなくて、いつしかなかったことにしてしまう。

だからこそ、「やっぱりそうだよね」は枯れかけた心に水をくれる。大事なものを思い出せる。一人じゃないって事実が「それを大事にしていいのだ」と、勇気をくれる。

あなたがそうだと嬉しい。
だから私も、二人目になりたい。

それでもベルトコンベアに乗って頑張る人のことは、「どうか転んで怪我しないで」と祈りながら見送ってきた。

映画『ラストマイル』のエンドロール。
どうしようもなく涙が止まらなくなった。

作中に出てくる絶望があまりにも深くて。それに度合いこそ違えど、それが私の知っている、周りにも溢れ返った嘆きだったから。

私はマイノリティなんかじゃなかったのかもしれない。あの苦しみは麻痺させているだけで、誰しもが持っているものなのかもしれない。

だけど

それに気づけたとて、どうすりゃいいんだ。

気づかせた瞬間に、転んで怪我するかもしれない。きっとそれくらい四方をガチガチに固められた人が、世界にはたくさんいるのに。

……

それでも

「やっぱりそうだよね」がここにもあった。

映画の中に差した一筋の光は、私が大事にしたいものとおんなじだった。やっぱり見失いたくなくて、これ以上世界にも手放さないでいてほしいもの。

なくさないでいようよ。
失くしたなら、探しにいこうよ。

ひとりいれば、きっとふたりになっていくから。

世界はとっくに壊れていたのかもしれない。
だけどまだ回り続けてる。

大事なものを隠し持って。

どこかで失くしたものを探しにいこうか 
どこにもなくっても

どこにもなかったねと 
笑う二人はがらくた

がらくた/米津玄師

がらくただっていいじゃないか。
失くしたままより、ずっと。


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