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ブランドの情緒的価値|アフターコロナの世界でブランドはどう変わるか?
モノやコンテンツに対峙した時の、人間の意志決定過程やイメージの形成過程に興味があって、ブランディングを勉強したりしています。
アフターコロナの世界がどうなっているか考え続けていたいなあ、と思っていたところ、とても面白い企画が流れてきたので自分用にまとめます。
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K:フラクタCEO 河野貴伸さん
Z:ECエバンジェリスト 川添 隆さん(ゾエさん)
L:リスナー
K:オンラインで丁寧なコミュニケーションを取るにあたって、いま意識すべき・やるべきことはある?
Z:顧客を理解しようとする気持ちを持つこと。理解した上で今の状況に合わせていくこと。
◆顧客を理解しようとする気持ちを持つ
Z:今の状況はコロナ以前とは違う。状況が違うと顧客の行動はどうしても変わる。
お客さんが考えてることの理解をしないと何も始まらないのは今も変わらない。
・なんでうちを指名してくれたんだろう?
・どこから来たんだろう?
・なんで今アプリを使ってくれてる?
などが気になる。
◆理解した上で今の状況に合わせていく
Z:これまでやってきた手法の経験値は生きるけど、中身は変えないといけないのは気をつけてること。
理解した上で、なるべく今の状況に合わせていく。
コロナ以前に勝ってた方法だったとしても、今に合わないものはやっても無意味。例えば、今「店頭でセールやってます」という告知が厳しいのは誰でもわかるはず。
Z:コミュニケーション以前の「今の中でできることってなんだっけ?」を考える。
例:Zoomでコミュニケーション取れるようにしよう、(できる店舗によるが)お客様に検温していただく、検温・消毒した上で出張販売に行く
K:本質的なことは変わらない。
→自分達が何者かを明確にした上で、顧客を理解してコミュニケーションする
でも、状況に合わせて可変させていくのはやらなきゃいけない。
コロナ真っ只中の世界と、アフターコロナはまた違うかも。
ブランド格になりきる
Z:ビジネスパーソンとしての個人は、ブランドや組織の皮を被った瞬間に、自分ゴト化できず判断を委ねたりする。
「いままでやってたことじゃないすか、何が悪いんすか」みたいな。
法人やブランドの人格があるとすれば、それになりきれてない。
◆ブランド格になりきっている状態だとこうなる
・このブランドの活動として、言い回しとしていいんだっけ?が考えられる
・単純に自粛ムードだから、とかではなく、今このタイミングでうちのブランドの活動ってこっちの方がいいんじゃないの?と考えられる
→スピード上がるし、トップが意思決定しても腹落ちして動ける
組織のあり方が試されている
Z:通常時でも一緒だけど、非常事態は組織が足かせになる。
K:危機感の感じ方が人それぞれ。ゆえに横のスピード感を揃えておかないと、結局足かせになっちゃう。
Z:PLやキャッシュフローを知らなかったら、危機感なんてない。お金ないって言われてもリアリティを感じられない。
K:いままさしく試されてる感すごいある。
一人一人が今までにない状況の中で何ができるか、を考えていかなきゃいけないのが今。
K:この先、すべての企業やブランドは変わっていく、あり方はどうなっていく?
Z:消費行動の根本は変わりますか?の質問と通ずる。
今回で再認識したこと:スピード・大義の重要性
それがないブランドは収束したとしても淘汰されていく。
Z:あとは不要不急問題。生活必需品と嗜好品がはっきり分かれた。
ファッションは衣食住の衣のはずなのに、嗜好品だったと突きつけられた。
それがわかった時に、どうするのか?は今後のあり方にすごく影響する。
ブランドの情緒的な価値について
Z:音楽は不要不急として、イベントの中止を迫られたけど、あらゆるアーティストがYoutubeやLINE Liveなどで無料配信をしている。こういった活動に勇気付けられた。
Z:音楽の凄みを感じた。これを同時に見てる人がたくさんいて、過去に見てる人も含めてブワーーっとコメントしてて、離れた場所で同じ瞬間に、みんなが感動している。音楽の影響力すごいなと思った。
イベント活動が自粛で切られて、ある種社会的に後回しにされたと思いきや、ここでリカバリしてきたのは、それぞれのアーティストへの信頼感というかそこに入り込む気持ちがあるからこそ。
受け手側の気持ちを占める割合とか温度感的な意味合いでのリカバリと理解しました。
提供する側としては、なくなったイベントの資金的なところのリカバリには足りていない(し、あえてあからさまに繋げていないところも多分ある)。
この状況でなにかできることをしたい、ファンが喜ぶことをしたい、という気持ちやそれを受け取ったときの感動や楽しさを否定したいわけではないんだけど。持続可能なのかどうかの視点は必要だよね。
コンテンツは情緒的なものが占める割合が大きいからなのかも知れないなあ。お金を稼ごうとしているとがっかりしちゃうみたいなのもそこ起因というか。「資本主義社会における表現とコンテンツ産業」みたいなタイトルで論文とか出てそうだな。
ひいてはコンテンツなのかプロダクトなのかの違いがありそうだし、自分がここにひっかかったのはコンテンツに寄った人間だからだというのがありそう。
Z:あるブランドが厳しくなってきたときに、「ちょっと今うち厳しいんで助けてください」って言って助けてもらえるかどうかは情緒的な価値によるのかも。
やはりもの売りとしてのブランドだけではきついなと。
生活必需品と嗜好品がはっきり分かれた今、繋がってる感はより大事になった。だから、これまで以上にロイヤリティや結びつきが重要。
すべてのものは不要不急
K:究極、すべてのものは不要不急だった。本当に人間が生きていくための食べ物だったり住居、最低限の服以外は、基本的にはぜんぶ不要不急だった。ということ。
でもお金を出してまでそれを買いたい、使いたいと思ってもらうにはコミュニケーションが必要不可欠。信頼とか絆とか、時には自分たちの弱みを見せちゃう時もあるし、そういう情緒的なコミュニケーションが必要だよね。というのは音楽の世界を見て僕も感じましたね。
プロダクトは機能や目的ありきで買うけど、たくさんある似たような機能のものからどれを選ぶかは情緒的なコミュニケーションやストーリーで決まると理解しました。
選ぶ理由がひとつふたつ載せられるかはそこにかかってるし、たぶん重さも可変だと思う。
Z:この時期にコム・デ・ギャルソン(CDG)のTシャツを買ったときに思ったことがある。
今後彼らの「常識をぶっ壊す、自分にチャレンジし続ける」みたいな、そういうあり方は変わらないだろうと。
(顧客側としては)変わらないから好き、みたいな。
コミュニケーション・運営の仕方は変えるかもしれないけど、普段の結びつきがある人たちの根本の思想とかあり方は変わらない。
Z:企業再生2回の経験から、きつい時には会社の文化、拠り所が必要になってくる。
のほほんとブランドやってる人たちのあり方が変わらないといけない。
K:緊急事態に、何を選択して、何を捨てるかが問われる。
自分たちの存在そのものっていう認識ができていないと、伝わるものも伝わらない。そもそもコミュニケーションもできない。
それぞれの「やりが降っても生き残る」を考える
Z:コロナが収束してからも、小売りとしては+1年くらい影響あると思う。新たな投資をしづらいとか、業績が回復しないブランドもあるだろう。
3・4年経ったら、この緊急事態を忘れちゃう。
でも過去を振り返ると、5〜10年以内に社会的インパクトがある出来事は必ず起こっている。
ブランドの思想があったとしてもビジネスとして成立しないと死ぬ。
その思想を実現するには源泉となる利益が必要。企業として利益追求を否定するのは違和感がある。
利益をどう配分するかの倫理観や何のために利益を得ているのかが重要。
無意味に、「利益をため込む」ことに誰も意味を感じない。
利益はさらなる顧客サービスのための投資などで顧客へ返す必要はあるが、その前に従業員に返す必要があると思っている。
こういう出来事への対策ではなく、日頃から「やりが降っても生き残る」やり方をそれぞれ作る必要がある。厳しめにみんなが捉えた方がいい。
K:今が厳しい時代であるということもまた事実。
L:不要不急と必要至急の間ってなんですか?
必要至急:どうしても必要。すぐにこれがないと死んじゃう
不要不急:いらないし急がない
Z:不要不急ってのは、余白があるなと。周りの行動を見ると、急を要してない人もふらっと外歩いてたりする。捉え方の余白があると感じる。
K:間というより、これらの言葉も余白がある。
L:ECの中でも特に業績が伸びている意外な業種ってありますか?
K:ミールキット(途中まで加工している食材)がめっちゃ売れている。
Z:リモートワークに関係する製品、WEBカメラ、キャプチャーボード・スイッチャーとか。子ども向けのプログラミング教材も非常に売れているらしい。
L:見通しの作り方が知りたい
Z:これまで描いてた成長戦略や未来はリセットしないといけない。
特に小売の場合は、キャッシュがいつまで持つかは各社の答えが出ているはず。それを延命させるために、退店、採用ストップなど生き残るための対応を優先し、現況下で利益を増やす方法を考える必要がある。
K:今回については過去の事例がないものだから正直読みきれないゆえに、憶測で判断していくしかない。
スペイン風邪の時に世界がその後どうなったかを見て、ある程度の世界的な見通しは立てられる。デジタルテクノロジーがあるからどうなるか見えづらいのもある。
リーマンショックの経験からすると、一番やばいパターンに該当する可能性が高いので、一番やばい予想をしておく。
Z:やばい順番のリストアップ。ここまできたらこれをやる、みたいな。今はそれを決めておくしかない。
L:町の小さなお店と、チェーン展開してるような店舗で生き残り方の違いって?
Z:ある。現時点でもチェーン店も嗜好品と必需品で分かれる。
店舗の出店形態(館に依存/路面店)によっても違う。
短期的に言うと、小さいお店の方が小回りは効く。けどリソースの問題、認知の問題でレバレッジがかけにくい。どう横で連携していくか。
テイクアウトの情報ページを作ったり、横につなげよう・助け合おうとするのはすごくいいなと思う。
K:小さいところの方がより機敏に動いて生き残りにかけてる感じはする。
L:WITHコロナで今の仕事がないとしたら、これから3年くらいでどんなビジネスにチャレンジする?
Z:そういった条件だからと言って、チャレンジすることないだろう。今までやってることや、これまで通りのチャレンジを続けるかな。
K :今やってることの延長線上になると思う。
Z:今は無料できっかけとノウハウだけ提供して、(コロナ禍が)収束後に仕事もらうとか。
今のニーズに対してコンテンツを提供するのも役割にはなるかなと。
L:リアルからオンラインへ大きくシフトする分野やもの、サービスって?
・会議:1時間ではなく10・15分で終わるとか
・デリバリー
・ソーシャルギフト
K:色々あるけどオンラインだけにはいけないから、分野としてはそう多くない。
Z:万が一、日本のリアル店舗が半分になったら、劇的に変わるだろう。
K:ここから先次第なところはある。
B2B企業で働いていると、クライアントとの会議がオンラインに移行するかどうかはクライアントの好み次第に寄るところも大きいなと思う。
(自分はコロナが空けたらぜったい直接出向くことになる)
L:アパレルショップの店員が転職する場合、どういうところが向いていると思う?
K :ECの世界に来てもらうしかない。
Z:OMO、オムニチャネルは、ビジネスパーソン自身がオフラインとオンライン両方の働き方に対応できるようにならないと、これからの時代だときついだろう。
K:人がオムニチャネル化しないといけない。
Z:オンラインオフラインで活きる人の違いはある。
けど、オンラインで活きる人がオフラインに隠れている可能性がある。
K:オンラインにぜひ!
オンラインで活きる人ってどういう人だろう、ITリテラシーみたいなことかな。
あとはコミュニケーションのところとか…?本質的なところは変わらないけど、オフラインならではのコミュニケーションのノウハウは確実にある。
L:緊急時に助けたくなる本質的なブランドになるためにはどうしたらいいのか
K:オールユアーズが結構上手いことやってた。
すごいなと思ったのは、会社としての目標や目指すべきところに顧客を巻き込む。
「到達していない」という自分たちの弱みをさらけ出している。
人間らしくある、弱いところも強いところもさらけ出すみたいなところで初めてお互い助け合える存在になるのはもしかしてあるのかも。
【泣き言です】
— 木村まさし🔥オールユアーズ ALL YOURS (@kimuramasashi82) March 31, 2020
今日は決算日です。そして、あと¥222,717の売上げで単年黒字化します…!ギリギリ達成見込みで進んでたのですが…3月のコロナの影響で最終失速…非常に言いにくいですが…悔いを残したくなくて…もし可能であれば…オンラインストアで…よろしくお願いします😭https://t.co/JGfWGAaQ99
Z:ブランドは人なのか?ってことですよね。ブランドや会社は人みたいなものになり得るか、に近い。企業規模が大きくなればなるほど、人らしさが薄れるけどそれをどこに残すか。カルチャーなのか。
顧客が思い浮かべるスターバックスの店舗は違ったとしても、結局お店の人たちそれぞれの対応の良さからスターバックスの印象ができている。
最後の印象は人が作ってる。規模がでかくなってもそれはできそうな気がする。
Z:その人っぽさがなくなると、助けたくなる感はかなり薄れちゃうかも。
さっきの、オールユアーズ=木村さん、みたいな。オールユアーズの中の人を知れば知るほど、あいつもあいつもやばいのか、って助けたくなる。
あのブランド=あの人、だとかそういうのが結びついてくると濃い繋がりになるかなと。
K:名前を聞いたときに、その中の人もそうだし、ブランドそのものもそうだし、想像できて胸がキュンとするみたいなものがない限りは助けあえないということ。ブランド側は知ってもらう努力をはしなきゃいけない。
結局コミュニケーションにつながってくるところではある。
ブランドからにじみ出る人っぽさが繋がり感を増し、情緒的な価値ができてくると理解。
そのブランドらしさが土台として流れていない(ブランドの人格になりきれていない)と、そうはならないし逆効果になるだろうな。
オールユアーズには「相手を主役にさせるめっちゃいいヤツ」という人格がある、というのを思い出しました。
共犯者名刺受け取れたー(^^)✨
— 悠羽(ゆう)@好きな服に囲まれたい人 (@you_uutopia) January 4, 2020
オールユアーズの良さをさらに知って、発信していきたいなー。
これも2020年の一つの目標にしよ。#オールユアーズ公認共犯者@allyours_jp pic.twitter.com/s1VOnr3CBA
最後に
Z:どの媒体でも言ってるんですが、自分が経験したことなので何度も言います。収束した後が肝心です。
完全に回復して100%営業できて、世の中のムードが変わったとしても、戻らないブランドが存在するということは断言できる。
1.コロナ前から落ちてるブランドは戻りにくい
2.顧客の中での一時的なブランドリセットみたいなものが起きる可能性
→縁遠くなったブランドは忘れちゃう。本当に必要なブランドのリストだけ頭の中に残る。
「パワーブランドの本質」では、それぞれの人の頭の中にあるブランド毎の銀行口座について書いてある。
この期間というのは、その貯金がみんな減っちゃう感じ。
生き残ったブランドだけが継続して買い続ける、買い続けなくても終わった後にじゃああそこ行こうか、となるのではないか。
ブランドの中の人でも何でもない普通の消費者として、この状況下で自分や周りがどう行動しているか・何を感じていたかは見ておきたいし覚えておきたいなと考えています。
川添さん、河野さん、濃いトークをありがとうございました!
大ボリュームのまとめ、読んでいただきありがとうございました!
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