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『人生が本当に変わる「87の時間ワザ」ー 時間術大全』

”速度を上げるばかりが人生ではない。”
  ー マハトマ・ガンディ ー

一番最初に出てくる引用文

原題は『MAKE TIME - HOW TO FOCUS ON WHAT MATTERS EVERY DAY』(時間を作るー日々大事なことに集中する方法)である。

著者はGoogleやYoutube出身のプロダクトデザイナー、自称時間オタクの
ジェイク・ナップとジョン・ゼラツキー。『SPRINT 最速仕事術』の著者である。依存性のあるITプロダクトを制作して来た著者らが、”時間はデザインできる”と
主張しており、その方法がアナログかつ古代人的生活の要素を取り入れる、というのが興味深かった。陰陽説に通ずるなぁと思った。”陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる。” である。

1948年に78歳でこの世を去ったガンディの時代よりもさらに私たちの生活は
加速している。時短、タイパ(タイムパフォーマンス)、倍速、いろんなものが
どんどん早くなっており、あれもやらねば、これもやらねばと文字通り心を失くす
ほど忙殺され、毎日が過ぎて行くことに焦りすら感じる。一体どうして私たちは
こんなに忙しいのだろう。

著者は2つの原因に重点を置いている。
・ 現代人は忙しいのを良しとする風潮があり「多忙中毒」である。
・ 私たちは、気を散らし時間を奪って行くスマホやエンターテイメントなどの
  「無限の泉」にハマりやすく、膨大な注意と時間が浪費されている。

著者は疑問を投げかける。
    ”絶え間ない忙しさは、本当に避けられないのか?
    ”無限の気晴らしは、本当にご褒美なのか?
確かにだ。時々見直すことが必要かもしれない。

デフォルトを変えろ:大事なことのために時間をつくる

そもそも「忙しい状態(多忙中毒)や注意散漫な状態(無限の泉)があたりまえ」になってはいないか?目の前のことに反応して忙しい状態になったり、スマホやSNSに依存してしまうようなデフォルトを見直し、大事なことに集中する時間をつくるために、著者は4ステップを毎日繰り返すことを提案している。

時間をつくる4ステップのシステム(著書の図より)
各項目の戦術を選び・試し・繰り返す

ステップ1(ハイライト):毎日「最重要事項」を選ぶ

ハイライト、つまりどこに1日の焦点を置くかを設定する。「日々過ぎて行く〜」と忙殺されている時は、目の前のことに反応し、おそらく自分のではなく、他人の優先事項のために時間を使っていることが多いのではないかと思う。自分の大事なことのために時間をつくるには、まず何のために時間ををつくるのかを決めることだ。1日の終わりに「今日は◯◯がハイライトだったなぁ」と言えるようなことが良い。「タスク」と「人生の長期目標」の中間的な立ち位置の「ちょうどよい
目標」というのが日々のハイライトには向いている。目標設定のポイントとしては、”緊急性(やらなくてはいけないこと)”、”満足感(やりたいこと)”、”喜び(好きなことや感情がポジティブに動くこと)”を基準にする。そして決めたハイライトの
ための時間を60〜90分スケジュールに組み込み、ブロックし実践する。

ステップ2(レーザー):「気を散らすもの」を撃退する

レーザー光線のようにハイライトに一点集中する状態にする。人の脳機能や行動パターンを利用した魅力的なテクノロジーが溢れる世の中である。気合いや根性などの意志力では集中モードに入れない。環境を整えないと難しいところだ。物理的に気を逸らされるもの(例:スマホ)を遠ざけたり、不便な状況を作ってアクセスしにくくしたり(例:SNSのアカウントはログアウトしておく)、テクノロジーの使い方をデザインし直す必要がある。集中力を高める戦術も提案されている。

ステップ3(チャージ):体を使って「脳を充電する」

集中力を高め、大事なことに時間をつくるには、脳のエネルギーが必要である。体のケアをしないと脳のエネルギーは生み出せない。睡眠、運動、食事は心身を健全にするために必須である。加えて、静寂な時間や人との親密な時間もエネルギー
チャージになるという。現代人も古代人も体の機能では大差ないので、基本に帰るということが体のケアには大事ということだろう。

ステップ4(チューニング):システムを調整、改善する

最後のステップとして、日々記録を取って振り返り、システムが自分に機能しているか判定することだ。データを取って分析し調整・改善して馴染ませて行く。
・ 今日のハイライトは何か?
・ ハイライトの時間はつくれたか?
・ レーザー:どのくらい集中して取り組めたか?
・ チャージ:どのくらいエネルギーがあったか?
・ チューニング:今日試した戦術はどうだったか?(良い点と改善点)
・ 何に感謝でき喜びを感じたか?

成功のコツは、戦術を「選ぶ、試す、繰り返す」そして「完璧」を目指さない

87の戦術が提案されているが、自分に合ったものを試行錯誤し、気軽に実験して
自分だけの良いシステムに仕上げていけばいいとのことだ。

感想

読み終えた感想は、”陽極まって陰となる”である。テクノロジーの発展(陽)で
とても便利で効率的で、安全安心で豊かな世の中になった。しかし、人間の本質は変わらない(陰)。テクノロジーの発展ほどに人間は進化していない。古代のように日々生存の危機はないものの、いろいろなストレスにさらされている。「多忙中毒」や依存性の強い「無限の泉」によってじわじわと毒されている。『モモ』にあるように時間泥棒は恐ろしい。豊かな時代だからこそ、テクノロジーをうまく活用しながら時間の使い方に主導権を握り、社会生活のバランスをとっていきたいものだと実感させられた。”速度を上げるばかりが人生ではない。” ほんとだね〜。
整理されていて読みやすい内容の本だった。

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