最後の心療内科受診

まるで睨みつけるように苛立ち
娘に薬の説明を読ませようと
「読んで!」と語気を強める
心療内科の医師

娘は一言も喋らず 
静かに目を閉じて倒れていきました。

私は並んで座っていたので
すぐに身体を支えることが出来ました。

「あら…あらら…」

驚きで苛立ちが消えた医師が
娘を見ながら

「え?こんなになっちゃうの?」

「はい」 


「へぇー…」

へぇーって…何?

この医師は、娘が意識消失することを
知っているはずで
その状態を聞いた上で
あれだけの薬を処方しているはずです。

娘が言っていた
あの人は薬を出すだけの人
私のことは診ていない…
その言葉が頭の中で回ります。

他人事のように不思議そうに娘を眺め
さほど心配する様子もない感じの態度

先日「怪我してないの?」と
心配してくれた小児科の医師との違いを感じ
腹立たしい気持ちより
情けなさと諦めのような感覚でした。

この医師はこれまで娘の
何を聞いて、何を診ていたのだろう

これまで連れてきていた意味とは…

もうここへ娘を連れて来ることはない…

目を閉じている娘に
ごめんよ、もう来なくていいから…
声に出さずに言いました。

迷いはなくなりました。 
いや、来る前から迷いはなかった。
ただ飲ませたくない薬をもらうだけに

来るしかなかった…

後悔と罪悪感が私を包みこんでいきます。


「まっ。もう少し先でしょうけど
脳波の検査もするでしょ?
とりあえず、薬引き続き飲んで
様子見ていきましょうかね」

もう何を言われても
何も感じませんし
何一つ受け取れませんでした。

そして私たちがここを訪れることは
もうありませんでした。



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