【エッセイ】希望的、楽観的な脳 ネガティブ・ケイパビリティ(帚木蓬生)
希望的、楽観的な脳
私たちは不安を避けるため、分かりたがる脳をもつ。そしてこの意味づけの際によく起こるのが、希望の付加である。
アメリカの調査では、「あなたは100歳以上生きますか」問質問に対して、10%の人が「イエス」と答えたそうだ。しかし当時100歳まで生きられる可能性のは0.02%である。
地球温暖化の問題もこのままではまずいとは知りつつも、なんとかなると思うのも、自分は事故に合わないだろうと考えるのも脳が希望的、楽観的であることを感じさせるが、行動するにあたっては、必要なものであり、進化の過程で、脳がそのような方向に進化したのだと考えられる。
経済学の調査でも、悲観的な人に比べ、楽観的な人の方が多くの収入を得ていることも分かっている。
この明るい未来を考える能力は、主に前頭前野皮質と皮質下の神経連絡網が関与しており、人他の動物よりもかなり大きい。この能力によって困難を切り抜けて進化してきたのでと言うことができる。
そのため、皮質下皮質下の偏桃体や帯状回前皮質の働きが低下すると、物事を悲観的に考えるうつ病を発症し、機能が異常をきたすとギャンブル障害を引き起こす。
一方、希望的な脳をうまく利用する方法もある。プラセボ(偽薬)効果である。ただのビタミン剤をよく効く薬と言って処方すると病気が治ってしまうというものである。プラセボ効果は、多くの実験から一定の効果が認めらている。昔話で遠くの薬草を取り行くのも、患者と看病するものの双方のプラセボ効果を期待したものであると考えることができる。
この希望的、楽観的な脳の利用は、医療だけでなく、現代のどうにもできないような個人の課題においても、一筋の光となりうるのではないかと考える。この際に、焦らずに、耐える力であるネガティブ・ケイパビリティの発揮も求められる。
すなわち、行動や取り組み、この読書やnoteへの記述にしても「おおよそ良い方向に向かっているだろう」と根拠がなくとも思い続けることが、良い方向に向かうきっかけとなるのかもしれない。