『バリ山行』松永K三蔵著 レビュー
▶今日のひとこと
義実家から枝豆を送ってもらった。茹でると
ふわっと枝豆特有の甘くて香ばしいあの香りがしてヨダレが……笑
ゆでても香りがしない枝豆もあるけど、これは間違いなく美味しいやつ!鮮やかな緑が湯気に包まれているのを見ていると幸せな気持ちに。
それでは『バリ山行』のレビューを
▶あらすじ
建装会社社員の波多は、会社の登山部になんとなく加入、登山に馴染み始めた頃、低山で道無き道をゆく、"バリ山行"をするという変わり種社員妻鹿に興味を持つ。
会社の危機で仕事が忙しくなる日々、妻の不機嫌そうな顔。そんな日常のなかで、波多はバリ山行にチャレンジしたくなり、妻鹿に同行を申し出る。最初は余裕しゃくしゃくだった波多。だがバリ山行は想像以上にハードで限界ギリギリの苦行になっていく。
▶ちょこっと感想
第171回芥川賞受賞作。
今回の芥川賞は2作とも読んだので、二作の系統がまるでちがうのが非常に興味深く感じた。
ざっくりいうと『サンショウウオの四十九日』が柔、この『バリ山行』は剛というイメージ。ただ両作に共通しているのは、内容はとても濃密ということ。
本作は会社小説でもありながら登山小説の面もあって、エンターテインメント要素も強い。
それでいて匂い立つような薮の匂い、滝や水の流れ、きりたった岩肌が目の前にみえるような描写は圧巻。
さらには死の危険に直面した波多が、会社のことも忘れ、アシストしてくれている妻鹿のことも素っ気なくしてしまう描写が人間くさく、対照的に妻鹿はまるでちっさいおぢさん妖精みたいな、達観したような不思議な軽やかさがあってその人間描写にも引き込まれた。
ほんの一粒の不思議さ。それがメインのどっしりしたリアリティ描写をきりりと引き立てて、読後なんともいえない余韻があった。読み応えのあり。
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