短篇小説(連載)忘却の文治(7)
翌日(火曜日)、文治はゲストハウス深紅の一階ロビー右側のラウンジで、朝食後のコーヒーを啜りながら新潟日報社の朝刊を眺めていた。
社会面をみていた文治の目が、ある記事にくぎ付けになった。
そこには、新潟から佐渡に渡ったとき、高速フェリーのジェットフォイルの文治の隣の席にいた女性の写真が掲載されており、記事の見出しに、『旅行客の女性が変死』と書かれていた。フェリーの隣の席にいた美しい女性に間違いない。文治は、一瞬ラウンジを見回した。何も隠し立ては無いのだが、人間の本能なのだ