短篇小説(連載)忘却の文治(9)
五十嵐刑事は、話を続けた。
「いま、その女性の身元の確認をしているところです。遺族が判った時点で、その遺族の承諾を得て、新潟大学の法医学者の手で、解剖するでしょう」
「時間がかかりそうですね」と文治が言うと、五十嵐刑事は、頷いた。そして言葉を繋いだ。
「ところで、最近連絡を取っていませんが、私の同期で警視庁にいる太田刑事のことを、木内さんは御存じありませんか?」と五十嵐刑事が文治に聞いた。
「そうそう、太田刑事のことは、良く知っていますよ。彼は確か捜査二課でしたね。特殊詐欺