158cm男の挑戦~ピアスで年相応になれるのか~
タイトルの通り、私は身長が158cmの男だ。
この身長が楽しいと思うこともあれば恨めしいと思うこともあり、喜怒哀楽に富んだ毎日を送っている。
そんな中でもこの身長が恨めしいと思うことは枚挙に暇がないが、特に実年齢よりも下に見られた時は言いようのない悔しさがある。
初めて行く美容室では今中学生かな?などと言われ、弟と歩けば弟が兄と言われ…
だからと言ってこれを友人などに相談するわけにはいかない。ひとたび相談しようものなら「それって若見え自慢?」「垢抜けてないからだよ」などと追い討ちもいいところな返答が来てしまい、まさに孤立無援を味わうことになる。
さて、この恨めしい気持ちをどうにかしてやろうと思った時、まずはシークレットシューズが思い浮かんだ。
しかし、だ。シューズというのが問題なのである。残念ながらここ日本では、家に入る時には靴を脱ぐ。
例のウイルスが落ち着いてきた頃、友人宅でタコパなど催すことがあるかもしれない。家に上がらなくてもボーリング等に誘われるかもしれない。
シューズを脱ぐ機会というのは、人生において思っているよりも訪れてしまうのだ。
関係各社様には是非シークレットソックスなるものを開発していただきたい。それも海水浴等に行けば同じなのだが。
身長を盛ることを諦めた時、ふと目に入ってきた 「ピアスしてたらなめられなくなった」というSNSの投稿に私は衝撃を受けた。
身長が変えられないのならその他を変えればいいじゃない―頭の中のマリーアントワネットもそう言っている 。
変えられない身長に固執せずとも変えられることはいくらでもあったのだ。
しかし、だ。ここで私は自分が痛みにめっぽう弱いことを思い出した。予防接種ですら全身麻酔を希望したいと思っているのに、ピアスなんて開けようものなら死ぬかもしれない。
ピアスすらも諦めそうになった時、イヤーカフという穴を開けずにできるイヤーアクセサリーがあることを知った。
なんという奇想天外で素晴らしい発明がこの世にはあるのだろうか。「穴を開ける」という耳アクセサリー界の常識を見事に打ち破ったのである。
私はイヤーカフ開発者様に思いつく限りの賛辞を贈りながらイヤーカフを購入した。
試しに着けてみるとなかなかどうして似合っている。着倒してくたびれた洋服も、イヤーカフが付いているだけで味があってオシャレに見える。これならどこから見てもナウでヤングなスタイリッシュダンディーボーイである。スカウトの1件や2件来てもおかしくない。
家族と検討してからお返事させて頂きます等々スカウトされた時の返答を考えながら、わざわざ隣駅のスーパーまで買い物に出かけた。
はいどうも、準芸能人のこの私がお買い物していますよなどと大きな気持ちで買い物を済ませ、お会計をしていると店員さんから「ポイントカード、お家の人から預かってないかな?」と尋ねられた。
歴史的大惨敗である。ここまで幼く見られる大惨敗はなかなかない。それがなにも今起きなくても。
なにが芸能人であろうか。なにが家族と検討してからであろうか。人様はいちいち他人の耳に何かがぶら下がってようが深く気にすることはないのであった。
これじゃあテレビに映ることがあってもせいぜいはじめてのおつかいくらいのものである。なんともバブでベイビーな結果となってしまった。
とんでもなく痛い勘違いをしていたと気づいた私は足早に家に帰りイヤーカフを外しながらひすひすと涙を流した。シークレットシューズとピアスがダメとなり、私はどうしたらスタイリッシュダンディーになれるのかを考えている。
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