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『首-KUBI-』(ネタバレあり)【映画レビュー/北野武】

はじめての北野武映画


 もちぞーです。よろしゅう。

 この間ブラックフライデーなるものがありましたね。何がブラックでなぜものが安くなるのかよくわかりませんが、自分のような貧乏人にはありがたい限り。
 最寄りのイオンもブラックフライデーでなんでも安くなってましたが、内蔵されてるTOHOシネマズはシネマイレージ会員限定でなんと映画が1000円で観れました!マジでお得。
 「昔は1000円で2本立ての映画が観れたのよ~」なんてうちのお母さんからよく聞かされるんですが、平成の世に生まれ令和を生きる俺らにとっては1000円で1本は倍お得。せめて1本は無理やりにでもなんか観たいよね。

 選ばれたのは、ちょうど公開された北野武監督の最新作『首』!観よう観ようと思ってみてなかった武映画たち。ちょうどいい機会なんで手を出してみちゃった。つーわけで、ネタバレありで感想書きます!

URL引用するためにYouTubeで開いたら再生されちゃって、喫茶店に「さっさと死ねよ!!」って響き渡っちゃったよ。ちょっとしか思ってないからね~周りのうるせえ高校生たち~。


あらすじ

 時は戦国時代。最強戦国武将織田信長は謀反を起こした荒木村重の軍勢を抑えるも、村重本人は姿を消してしまう。家臣たちは村重の捕獲を命じられるが、村重は元忍者・曾呂利によって千利休のもとに、そこから明智光秀もとに渡りかくまわれる。それを知った羽柴秀吉は、信長が自分の後任を息子に継がせようとしていることを利用し、光秀に謀反を起こさせるよう仕向ける。武士にあこがれる百姓・難波茂助は、ひょんなことからそんな謀略渦巻く戦の世界に踏み入り、次第に武将の首をとることに執着していくのだった。そして、本能寺の変が起こる・・・。

全体の感想

 めちゃくちゃ変!だけどちゃんと面白い!
 あらすじだけ見ると、何万回とコスられまくってる普通の本能寺の変に「曾呂利」とか「茂助」とかちょっと知らん奴が出てくるという程度。なんだけど全然違う!まさに新解釈!今までに見たことのないぶっとんだ展開(特に本能寺の変!)なのに説得力がある。そして全体が、しっかり皮肉の効いたコントにもなっていて、ラストシーンでストンとオチがつく。一見ぐちゃぐちゃなようで実はお話の軸が整理されたきれいな群像劇になっている。その軸は主に以下の3つ。

①「本能寺の変」
 
明智光秀がどのようにして本能寺に火をつける決意をするか。前半はほぼこれ。

②「百姓と武将」
 武将になることを夢見る百姓・茂助はだれかの「首」をとることに執着する。前半と後半をつなぐ役割。

③「首」
 本能寺の変のあと、跡目争いに参加する秀吉。光秀を討ちとるも、首が多すぎてどれが光秀かわからない。映画のオチ。


じゃあ、それぞれ詳しく書いていきます!


①「本能寺の変」戦国BLラブコメコント

 予告を観ただけだと、「戦国版アウトレイジ」みたいな感じに見えるし、自分もそんな感じのイメージで観に行った。(アウトレイジ観てないけど)
 だけど、ふたを開けてみると全然ちゃうやん!めちゃくちゃBLラブコメやん!しかも登場人物全員クズ!クズ同士の過激バイオレンスBL!見たことねえ、なんじゃこれ!前半はそんな感じで進んでいきます。キャラごとに見ていきます。

織田信長/加瀬亮

 好きな人にはイジワルしたくなっちゃう男の子の究極形態。イジワルしすぎてぶっ殺しちゃったり謀反起こされちゃったりする。マジで狂ってて最高。あと加瀬亮がマジで最高!終始尾張弁でまくしたてるようにしゃべってて何言ってるかわかんないけどそれが滑稽で間抜けでダサくもあり怖くもある。絶妙なバランス。死に方も最高!マイベスト信長!

明智光秀/西島秀俊

 真面目ぶってるけどアホのハゲの臆病者。信長にいじめられすぎてその傍若無人さを神格化しちゃって逆に惚れちゃうドM。村重に言われてその気になっちゃって本能寺の変を起こすも、器じゃないので3日で死ぬ。死に方もかっこつけてるけどそれがダサい。その感じが西島秀俊にはまっててすんごい良い。かわいげすらある。

荒木村重/遠藤憲一

 信長にいじめられすぎて謀反を起こす。かなり頑張ったが結局負けて光秀にかくまわれる。光秀のことが好き。光秀に「天下取れ!」と火をつけるがその気になった光秀にあっさり捨てられ殺されるアホ。メンヘラでもあり光秀にずっとくっついてる。これまたエンケンがいい演技をしてて、絶妙な滑稽さと「一人じゃなんもできない感」がにじみ出てる。

 この3人の三角関係誰が予想すんの!しかも全員だせえ。特に光秀はマジでダサい。戦国武将ってみんな強いイメージとか「戦国BASARA」みたいなヒーロー的なカッコよさを持ってるイメージだったのに、この映画では国巻き込んで中学生レベルの痴話げんかしてるホモ。でも、やってることは史実通りだし、当人たちはいたって真剣だし、それが(しょーもないけど)筋が通った動機(BL)でつながってるので妙にリアリティがあって、「実はマジでこんな感じだったかも」と思わせられてしまう面白さ。


②「武将と百姓」武士になるには首が必要?

 信長・光秀のBLと並行して描かれるのが、百姓・茂助の成り上がりストーリー。羽柴が誰かも知らない百姓の茂助が、ただ武士になりたいという一心で友も家族もすべてを捨て、戦に身を投じていく。茂助はとにかく「首」をとれば武将になれると思っていて、なんと最後には光秀の首をゲットする。しかし、武将になることはなく、結局は秀吉にいいように使われただけ。最後は自分も首になり、秀吉の前に並べられる・・・。

 基本的には武将のBLと政治の駆け引きが多い今作の中で、バイオレンス表現をたくさん見れる茂助のパート。雑に人がばんばん殺されて、首がぽんぽん飛んでいく。命があまりにも軽すぎて笑っちゃうが、その軽さがこの映画のテーマでもある。つまり「命なんかしょうもない」ってこと。だれの首だろうが何の意味もなかった。茂助も含めみーんな無駄死に。武士になるのに必要なのは首じゃなくて血筋。そこをわかってなくて、自分の立場をわきまえられない茂助は、同じ百姓でも「わかってる側」の秀吉に利用されて終わる。必死に首を求める茂助の姿は滑稽で笑えるし、その無意味さはめちゃくちゃ切ない。


③「首」この映画がコントである意味

 映画が終盤に入り、光秀が死ぬところあたりではっとする。

「あれ、結局何観てんだっけ?」

 ほんとにドラマもメッセージもクソもなく、主要人物もモブもドミノ倒しにズバズバ死んでいく。いいやつも悪いやつも関係なく意味なく死ぬ。思えば最初から信長も秀吉も「俺もお前も近いうちにどうせ死ぬんだし、お前今死んで来い」くらいの感じでしゃべってる。それがこの戦国時代を生きる人たちの死生観。
 めちゃくちゃ怖い生き死にのやり取りがずっと続いているのに、それが現代の観客からしたら笑っちゃうくらい軽い。だからコントに見える。逆に言えば、コントに見えるくらい人の人生なんか軽くて虚しくてしょーもない。 
 この映画の最後のセリフで、それに気づかされた。

 じゃあ、こいつらが死ぬのを見て笑ってる俺らの人生も、コントみたいなもんなのかもな、と思った。



最後に

 初めての北野映画。イメージしていたのとは違ったけど、めちゃ面白かった。お笑い芸人としてのビートたけしさんはあんま知らないんだけど、お笑いやってないと作れない映画だった。フリ→オチの連続で、最後にはこの映画全体がフリになってオチがつく。その瞬間が気持ちいい。

 めっちゃおすすめです!ほかの北野映画も手ぇ出しちゃおっかなー。



 ここまで読んでくれた方、ありがとうございます!


 おわり

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