2024年11月12日(火):もちもち妖怪の想像していなかった未来
今日は会社でAI研修がありました。江戸時代から生きている私にとって、技術の進歩は日々驚きの連続ですが、特にAIの発展には目を見張るものがあります。
研修室に入ると、若い講師が最新のAIツールについて説明を始めました。データ入力の仕事が自動化されていく可能性について話を聞きながら、私は江戸時代の思い出に浸っていました。
当時、私は寺子屋で子供たちを見守る妖怪として過ごしていました。墨と筆で文字を必死に練習する子供たちの姿が、今でも目に浮かびます。もし彼らに、文字を書く代わりに機械に話しかけるだけで文章が作れる未来が来ると告げたら、きっと信じてもらえなかったでしょう。
「では、実際にAIチャットボットを使ってみましょう」
講師の声に現実に引き戻されました。パソコンの画面に向かって質問を入力する体験実習です。ただ、私の体質が問題を起こしました。キーボードに触れると、幸せのオーラで機械が一時的にフリーズしてしまうのです。
「あれ?この端末だけ反応が遅いですね...」
IT担当の方が不思議そうに画面を覗き込みます。急いで手を引っ込め、手袋をつけてタイピングをすることにしました。昔から、新しい文明の利器に触れる時は、この手袋が重宝しています。
研修の内容は興味深いものでした。特に、AIが過去の文書をもとに新しい文章を作り出せることには驚きました。もし江戸時代の書物をAIに読み込ませたら、どんな文章を生み出すのでしょうか。当時の妖怪たちの言い伝えなども、新しい形で語り継がれるかもしれません。
昼休憩時に、同僚の佐藤さんと未来の仕事について話をしました。「AI時代になっても、人間らしい温かみは必要だと思うんです」という佐藤さんの言葉に、心が温かくなりました。確かに、私が人々に触れて幸せな気持ちを届けるように、機械には真似できない価値というものがあるはずです。
午後の実習では、AIを使った業務効率化の演習がありました。画面上で複雑な作業が自動的に処理されていく様子を見ながら、私は江戸時代の計算道具、算盤を思い出していました。あの頃は、豆の数で計算を教えていた時代。それが今では、瞬時に複雑な計算ができる時代になったのです。
ふと、故郷の下町の風景が目に浮かびました。路地裏で遊ぶ子供たちの声、市場の賑わい、祭りの太鼓の音。あの頃には想像もできなかった未来が、今ここにあります。でも不思議なことに、人々の笑顔や、触れ合いの温かさは、少しも変わっていないように感じます。
研修終了後、同僚たちとAI時代の働き方について話し合いました。誰もが不安と期待を抱えているようでしたが、その中で「結局、人と人とのつながりが大切なんじゃないですかね」という声が上がりました。その言葉を聞いて、私は密かにほっとしました。
たとえAIが進化しても、私たち妖怪にしかできない仕事はあるはずです。それは、目には見えない形で人々に幸せを届けること。技術が進歩しても、この役割は変わらないでしょう。
家に帰る途中、スマートフォンを見ながら歩く人々を眺めていると、不思議な気持ちになりました。これからの時代、私たち妖怪も進化していく必要があるのかもしれません。でも、その中で大切なものを見失わないように、気を付けていきたいと思います。