短歌・随筆「常温の冬」
「常温の冬」
新しく処方された薬は嘘みたいによく効いて、僕は気付いたら16時間も眠っていた。起きて尚意識は朦朧として、現実を画面を通して眺めているみたいだった。VRってこういう感じなんだろうか。そういえば、寝ている途中でトイレに行ったり、ラインを返したり、バナナを食べたりした気がする。ああ、ラインはちゃんと返してある。バナナは、ゴミ箱に入ってないから食べてないみたいだ。
こんなところ、早く出ていけたらいいのに。そう思う自分と、この街がどこよりも好きな自分がいる。両方、紛れ