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技能実習生の夢 - 映画「海辺の彼女たち」を見て考えたこと

先月末、映画「海辺の彼女たち」を観ました。

技能実習生として来日したベトナム人女性3人の物語。劣悪な労働環境から脱出し、ブローカーを通じて青森の海辺で仕事をはじめます。故郷に戻れない寂しさを呑み込んで働き続けるなか、主人公フォンさんの妊娠が発覚。在留カードを前職場に預けたまま脱走したため、診察を受けることもできません。

印象的だったのは、ベトナム人同士が揉めているシーン。フォンさんが助けを求めたのは、在留カードの偽装を生業とする在日ベトナム人。彼は高額を請求し、「払えないならカードは渡さない」と強く言い放ちます。

私は間違ったバイアスを持っていました。在日ベトナム人同士は同郷の絆で結ばれていて、家族のように助け合う ー そう思い込んでいました。それが必ずしも正しくないことに、この映画を通して気づきました。

技能実習生の心のなか

「海辺の彼女たち」では、当事者である3人の感情がピックアップされています。

藤元明緒監督は、「映画だけ、と見られないように、起きていることや感情のリアリティを追求した」と仰っています。ベトナムでは海外に働きに出ることがめずらしくなく、3人の女優も役にスッと入れた、とのこと(5/12朝日新聞オンラインイベント「日本に来て幸せ?」より)。

映画のなかで3人は、笑顔をあまり見せません。不安や緊張による顔の強張りや、自らを納得させるように呑み込んだり、慰めあう表情が多くを占めます。

そんな技能実習生も、来日前は夢を持っていたはず。澤田晃宏さんの著書「ルポ 技能実習生」では、日本が無理やり技能実習生を連れてきているのではなく、彼ら自らが日本を志している事実が綴られています。

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村に「3年で300万円貯金できる」と掲示されている。元実習生が建てた家が宣伝塔となっている。帰国後に日系企業で働く先輩が多くいるー身近な成功例を知り、若者自らが日本を志しているとのことです。

技能実習後、夢を叶えたベトナム人もいます。朝日新聞 宋光祐の記事で紹介されている、ホーチミンのスオンさん。「大好きな日本茶をベトナム人に飲んで欲しい」実習で稼いだお金を開業資金に回し、日本茶カフェに挑戦しています。装飾も日本風にこだわっているとのこと。行ってみたい。

一人ひとりの夢を応援したい

技能実習生それぞれ、日本に来る前に相当の覚悟と大きな夢があったはず。夢を叶える若者がいる一方、送り出しの仕組みや一部日本企業による人権侵害で、先行きを断たれてしまった実習生がいることに、心が痛みます。

技能実習制度のマイナス面が報道されることが多く、「技能実習生=かわいそう」というバイアスが形成されてしまっているように思います。たしかに、決して許されない問題を多くの日本人が知るべきです。でも、制度に限らず若者の気持ちをもっと知るべきだな、と私は考えます。技能実習生がどんな明るいイメージを持って日本を目指してくれたのか、将来の夢はなんなのか…。

制度そのものを否定するのではなく、実習生の夢や感情に注目する。若者の夢を応援する姿勢で、技能実習生制度の在り方を考えていく。私はこの視点で、技能実習生と対話をしていきたいです。彼らが夢に近づくためのひとつの糧となるよう、せっかく日本にいるのだから日本ならではの体験をしてほしい。微力ながら考え行動していきます。

制度だけでなく、当事者の感情に注目する。それを私に教えてくれた「海辺の彼女たち」、今も公開中です。


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