同じ本を読んでも、同じ感想にならない 「オススメ」に潜む罠
皆さんは日頃、自分が気に入った本や映画、音楽を人にオススメするということをするでしょうか?
僕は「する」のは好きですが、「される」のは嫌いです。
自分がされて嫌なことを人にしています。
「オススメ」という行為には、他意はなくとも、
自動的にその人の「これは良いものだよ」という包装紙に包まれています。
それに加えて、オススメする人にどうなって欲しいか、どう変わって欲しいか、こういう感想を持って欲しい、などというリボンも巻かれています。
考えすぎでしょうか。
しかしこれが紛れもない僕がオススメされることが嫌いな理由なのです。
例えば、僕は、社会的な成功とか賃金に左右されず自分の好きな仕事をやっている。
それに対して、「もっと現実的になりなよ」「嫌いなことも我慢してやらないとこの世界で生きていけないよ」みたいな内容の本を渡されると、
「こんな立派なのし付きで渡されてもなあ」
となります。
やはり考えすぎな気もしますが、ここで言いたいのは、
おすすめという行為は、
そのオススメした物が「純粋な」状態で相手に届くということが不可能なものである、ということです。
絶対にオススメする側のフィルターを通らざるを得ないからです。
次にオススメする側のスタンスに立って考えていきたいと思います。
先ほど僕はオススメすることは好き、と言いました。
ここに矛盾があることはわかっています。
しかし、おそらく日本全人口平均と比べると読書量や映画などのインプットの総量が多いはずの僕は、人にオススメできる本棚の大きさが人より大きいと言えます。
尊大だなんて言わないでくださいね。
それでいて「人を見る目」という類のものには自信があったりもするので、
つい調子に乗って人に本や映画をオススメしてしまうのです。
「あ、今のこの人の立場、抱えてる悩みからしたらこの本だ」
といったように、コンシェルジュ的な役回りを勝手に承って、マッチング作業をしてしまいたくなる。
この一種の癖は、大層感謝されることもありますが、総スカンを食らうこともあります。
全打席空振り三振なら諦めもつくのですが、ホームランとは言わずともヒットは打てる。
だからこそ、人に対して
「こんな大袈裟なラッピング要らないよね」
と思いつつも、できるだけ
「仲良い相手だからプレゼント包装してもらわなかったけど、良いよね?」
くらいのテンションで「オススメ」を渡すことを心がけています。
ところで、掲題の件にようやく触れるのですが、
この「同じ本を読んでも同じ感想にならない」とは、
繰り返し言っている「包装紙」や「リボン」にくるまれた、「こう変化してほしい」「こういう感想を抱いてほしい」という
こちらの目論見、期待が爽快に覆されるということを意味します。
この現象、先程見立てには自信があると言った通り、なかなかお目にかかれる現象ではないのです。
大抵僕が思った通りの感想を皆さん伝えてくれます。
しかし極稀に、こちらが想定した感想に至らない被オススメ者がいます。
極端な例を挙げると、こちらが
「この人は資本主義の市場原理や成果主義に囚われて息苦しそうだから、資本主義を打破して新しい社会システムの構築を目指そう、という趣旨の本をオススメしよう」と思ったとします。
当然こちらとしては、
「資本主義が破綻しえいる現実や新しいシステムの必要性を感じました」
といった類の感想を予想している。
そこに、
「この本を読んで、資本主義の荒波をどう乗り越えていくかのヒントを貰いました」という感想が返ってくるようなものです。
ちなみにこれは実際あったお話です。
僕はこのような感想を貰うことをとても嬉しく思います。
なぜなら、僕は「オススメ」がもたらす弊害を知っているから。
余計な装飾が伴わざるをえないその性質を知っているから。
だからこそ、こちらが予想した感想と違うものを感じる人に出会うと、「オススメ」した甲斐があったなあ、と思うのです。
僕のフィルターを通したものですが良ければどうぞ…
という後ろめたさ、罪悪感のようなものが少し和らぐのです。
だから、予想した感想と違ったものを感じ取ってくれるのは大歓迎でとても喜ばしいことなのです。
オススメの弊害は知っているけれど、
主観で見ても客観で見ても「とにかく良い!」という作品はある。
けれどそれに出会っていない人が大勢いる。
だからその作品たちをもっと多くの人に知ってほしい。
純粋な気持ちで「オススメ」したいだけなのに、
「オススメ」には余計な包装がされてしまう。
僕はそれがとても嫌です。
けれどそれはその性質上避けられない。
だからこそ、
先程言ったような「予想を裏切ってくれる」人がいると、
僕の「オススメモチベーション」は大幅に上昇するのです。
言ってしまえば、感想はどうでもいいから良い作品に数多く触れてほしいのです。
僕はハブになれればそれでいい。
もっと「オススメ」したいので、
皆さんどんどん僕の予想を裏切ってくださいね。
どんな締め方やねん(笑)
それではまた。
小野トロ
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