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藻塩
2023年2月8日 12:57
昼休憩になると、俺は校舎の屋上に行く。貴重な休み時間をあの窮屈な生徒指導室で過ごすのは、正直ごめんだ。抜けるような青空の下、屋上の柵に寄りかかりながら煙草を吹かす。立ち上っていく煙が、空に浮かぶ巨大な入道雲に吞み込まれていくように見えた。 「あ。センセ~!やっとみつけた~」立ち入り禁止で、俺以外に誰もいない筈の屋上に、なんとも生意気な声が響く「も~。何処にもいないから探しましたよう
2023年3月23日 22:58
時刻はとっくの前に24時を回った。部屋で音を発するものは、俺が叩いているキーボードと、不規則に明滅する蛍光灯だけだ。 「一ノ瀬。進捗は?」 突然、背後から声を掛けられる。 「あ、志村さん。お疲れ様です」 彼女は気だるげな視線をこちらに投げ、缶コーヒーを一本こちらに差し出していた。 「ありがとうございます。進捗は…良くはないですかねぇ」 コーヒーを受け取り、言葉を返す。