映画『ラストマイル』感想
//ネタバレ注意//
まずはじめに。なぜ自分は映画のタイトルを知って映画に興味を持ちながらその意味を調べたり、知ろうとしなかったのか。映画を見始めた瞬間不思議に思った。もちろん作中の造語の可能性があり、その場合はネタバレに繋がるから調べない方が良い。ただし、「ラストマイル」はおそらくどこかで以前聞いたことのある言葉だった。
2024年問題が提起される今だからこそ、作られた作品なのだろうか。バッドエンドとは言わないまでも万事解決みんなハッピーといわけにないかない形で終わりを迎えた。物流の上流、中流、下流すべてに切り込んだ作品であり、現代社会に警鐘を鳴らしているように感じた。
「アンナチュラル」「MIU404」いずれも不自然死究明研究所の法医解剖師、初動捜査を行う機動捜査隊という言葉を選ばずに言うと日の当たらない職業にスポットライトを当てたドラマだった。
(医療ドラマも刑事ドラマもいくらだってある。いわゆる大枠はその王道に当てはまりつつも、その中でもニッチな部分を舞台にドラマを描いたのは、斬新さを求めた結果なのか、あるいは問題意識あってのものなのか。)
本作は、というと物流センターが舞台。例に漏れず物流というのは人々の生活の当たり前に根ざしながらも、世間的には地味というイメージがついている。なかなかドラマや映画でスポットライトの当てられない題材だと思う。
感想
・シングルマザーの家庭とドライバー親子が本筋とは別で、時たま描かれていてどう物語に関わってくるのか気になっていたら、ラストマイルを担う者が12個目の爆弾を食い止め、救うという帰結がとても面白かった!
シングルマザーとその娘たちとの描写、本筋と関係ないのに面白かった。
・羊急便の支部長みたいな阿部サダヲが演じてた人めっっちゃ阿部サダヲに合ってたし、社長と知らずに思いの丈をぶちまけた後に「上に伝える手間が省けたよ!」って吐き捨てるのめっちゃ好き。
・物流の下流が問題視されがちだけど、中流をメインの舞台として仕事の過労やストレスから来る鬱について取り上げていたのが面白かった。ラストマイルであるタイトルはいわゆる「下流」を指すと思うから、そこに意図があるのかは気になった。
・アメリカが少しだけ映し出されてて、海外で働くのかっこええ!って思った。海外で働くことへの憧れが少し膨れ上がった。
・余談だけど、ちょっと解釈が分かれる、考察して答えを求めたくなるような作品ってパンフレット欲しくなるよね。まあ鑑賞後、呆然としながら映画館を後にしてしまったから買いそびれました、わたしは。
ロッカーに書かれた言葉の意味
ベルトコンベアというのは、2.4m/sで絶え間なく動き続ける。人々の生活を支える物流というのは途絶えてはいけない。"カスタマーセントリック"という言葉に則り、お客様のために「何があっても止めてはいけない」。
そんなベルトコンベアの耐荷重(たいかじゅう)は70kgまで。ブラックフライデーへの恐怖心に終止符が打つべく飛び降りたわけだが、同時に彼は常に70%以上をキープしなければならない稼働率を0にしたかった。
決して止めてはいけないベルトコンベア、物流網を止めざるを得ない状況にすることで、何か訴えたかったのだと思う。ただ自殺するだけではいけない、抵抗を示すための最後の足掻きだったのではないだろうか。
そして、それでもなお止まらないベルトコンベア。ベルトコンベアが止まったことで、稼働率は低下するも0に至るまでもなく再び動き出すのだった。
1人の死を以ってしても、社会は回り続けるのだ。社会とベルトコンベアを重ねているという解釈は無理があるだろうか。
縁側びより
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