マガジンのカバー画像

「きみのお金は誰のため」読者限定マガジン

16
小説「きみのお金は誰のため」を読了した読者に向けて、本書では書き切れなかった話、イベント情報などを提供していきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

豚キムチから考える食料自給率

*アエラに連載中の「経済のミカタ」を一部変更して掲載しています* 円安やアメリカ産牛肉の生産量の減少によって、輸入牛肉の価格が上がり続けている。豚肉は国産も輸入も価格があまり変わらないそうだ。 このミートショックの話を聞いて、ふと大学時代の話を思い出した。 その日、住んでいた学生寮の食堂で、寮の先輩が食事の準備をしていた。彼は50%引きのシールが貼られたメンチカツをゲットしていて、さらに豚キムチを作っていた。 あまりにも肉肉しい献立に、「野菜食べた方がいいですよ」と余計

伏線を張る男と総理大臣までの距離

小説の伏線は、最後の章で回収されることが多い。 ページが残りわずかになると、読者は心を動かす準備をする。 しかし、現実の人生はそんなにうまくいかない。 放置されたままの伏線もあるし、中途半端な結末に終わることもある。 そして、二度回収されることもある。 以前にもnoteで書いた話だが、最近二回目の伏線回収があったので、再び書きたいと思う。 彼に出会ったのは、今から5年前、2019年の夏だった。 カリスマ編集者が張った伏線 僕は原宿にある佐渡島さんのオフィスを訪れてい

金利上昇で儲かる人、損する人

日銀の利上げをきっかけにドル円相場が142円にまで急落した。 ずっと超低金利の日本に暮らしてきた僕らにとって「利上げ」といってもなかなか実感がわかない。 ゴールドマン時代に金利市場をずっと見てきた僕でさえ、16年のトレーダー人生の中で利上げは2、3回くらいしか経験がない。 ここで、金利市場のマニアックな話をするつもりはないが、僕らの暮らしにどんな影響があるのかを少しばかり考えてみたい。 まず、金利が上がるからといって全体のお金が増えるわけではないという点を理解してほしい

それってキレイごと?「人間関係という資産が一番重要だ」

"人間関係という資産が1番重要だと思って生きてる" アベマプライム火曜日(7月9日)での田村淳さんの言葉。 僕はすぐ隣で、その言葉を聞いて大きく頷いていた。 放送時間がのこりわずかで、それ以上話を広げられなかったが、 僕もまったく同じ結論にたどりついていた。 マネー資本主義のど真ん中にいたのにも関わらずである。 なぜ、お金より人間関係か この日、金融教育の専門家として、僕はスタジオに呼ばれていた。 高校でも金融教育が始まっているが、内容が資産運用の話に偏っていて、証券

「引き寄せの法則」について考えてみた

先日、「引き寄せの法則」を実感したことがあった。 BSテレ東の番組「あの本、読みました?」に出演させてもらった。 理系作家特集ということで、ミステリィ作家森博嗣さんの担当編集者の河北壮平さん、東野圭吾さんの担当編集者の秋月透馬さん、と僕田内学の三人がゲストに呼ばれたのである。 なんとも恐れ多い話だ。僕も理系作家であることは間違いないが、森博嗣さんや東野圭吾さんは超一流の作家である。 僕は、大学生の時以来20年以上、森博嗣さんの大ファンだ。 『すべてがFになる』『笑わない

「きみのお金は誰のため」ボスの正体

灘高の宇宙人 先週1ドル160円を超えて、止まらない円安に世の中がざわついていたが、今週、一気に152円台まで下がった。 今回の値動きは、政府と日本銀行がドルを売って円を買う「為替介入」に踏み切ったことによるもので、その額はおよそ5兆円だったのではないかと噂されている。(公表はされていない) 今回のようなドルを売る介入は、財務省が外貨準備として保有している200兆円分相当のドル資金を切り崩しており、無限に行えるものではない。先週、「止まらない円安、政府の借金よりもヤバい

「きみのお金は誰のため続編(仮)」プロローグver0.1

2023年10月8日に「きみのお金は誰のため」の予約が始まってから、半年が経った。当初目指していた100万部にはまだ遠いのだが、おかげさまで19万部に達した。 数字の奴隷 5年前まで、為替レートや債券先物、10年スワップレートなどの値動きを、じーっと見ながら過ごしていた頃とは生活が大きく変わった。 しかしながら、数字を気にしながら生きているという意味では本質的には変わっていない。毎日のように紀伊國屋やTSUTAYAのランキングを見ながら、一喜一憂しているのだ。 「お金の奴

小説『きみのお金は誰のため』で伝えたかった社会への当事者意識

『きみのお金は誰のため』の重要なテーマの一つは、一人ひとりが社会を作っている、未来を作っているを感じてもらうことにあります。 統計にも出てますが、日本は諸外国に比べて社会への参加意識が薄く、社会=他人事のように捉えられがちです。 そうならないために、どうすれば社会への当事者意識が持てるのでしょうか。 大胆な教育改革で有名な工藤勇一先生も僕の本を読んでくださったのですが、先生の問題意識も全く同じところにありました。 前後編の対談記事です。

「書く才能」とは、AIを超える〇〇力

今週、関西大学梅田キャンパス内にあるスタートアップカフェで、佐渡島庸平さんと対談イベントをしてきた。 X(旧ツイッター)でのイベント告知に、こんなことを書いた。 誇張でもなく、かなりドSである。今日は、そのイベントで話した”告発”部分について書こうと思う。 昨年10月に出版した「きみのお金は誰のため」の執筆にあたって、この佐渡島さんには大変お世話になった。 告発に入る前に、誤解ないように説明しておくと、佐渡島さんに編集協力してもらったのはこの本の小説部分である。ビジネ

読者の皆さん、一票を投じてくれた皆さんへ

ご報告があります。 『きみのお金は誰のため』が ビジネス書グランプリ2024で【総合グランプリ】をいただきました! 【リベラルアーツ部門賞】もいただき、W受賞となりました。 本書でも「一人ひとりの投票で未来は決められている」と書いてはいますが、それを実感する機会は、僕自身ありませんでした。 しかし、今回のビジネス書グランプリの結果は、間違いなく、投票してくださった皆さん一人ひとりの票のおかげです。 一票によって結果は変わるし、未来が本当に変わるんだと実感しました。

小説「きみのお金は誰のため」記事化された書店イベント

小説「きみのお金は誰のため」を出版して3ヶ月たちました。おかげさまで、自分の本をいろんな書店で見かけるようになりました。気づけば15万部に達し、ありがたいかぎりです。 さて、これまで開いた書店イベントのうち二つは、東洋経済オンラインで記事化してもらっております。 参加できなかったみなさん、ぜひ、ご一読ください。 イベント①「なぜ僕たちは『お金の不安』に取り憑かれているのか」 こちらは、2023年11月30日にジュンク堂池袋本店で開かれたトークイベント。対談相手は、小説

「今から、お金よりも仲間が大事なことを証明します」

先日、山口の長府高校で金融教育の講演をしてきました。 タイトルは、新刊小説と同じく「きみのお金は誰のため」。 高校生のみなさんが、とくに熱心に聞いてくださったのは、後半にさしかかって、 「いまから、お金よりも仲間の方が大事なことを証明します」 と話したあたりから。 人は一人で生きていけないから、助け合って生きている。 家族や仲間は自分を助けてくれる大切な存在。 お金というのは“仲間ではない人に助けてもらえる”チケット。 仲間を増やすためのツールに過ぎないわけだから、お

小説「きみのお金は誰のため」出版記念トークイベント@青山ブックセンター

本日11月6日、「きみのお金は誰のため」の再重版が決まり、発行部数は3刷累計5万部になりました。発売してまだ一ヶ月も経ちませんが、多くの方々に読んでもらえていることには感謝しかありません。 さて、再来週、11月17日(金)に、東京の青山ブックセンター本店で、出版記念トークイベントを開催します。 タイトルは「人生も社会も豊かにするお金の教養~“お金・偏差値・いいね”数字に振り回されない生き方~」田内学×近内悠太 対談相手の近内悠太さんは、本書第5章を書くにあたって参考文献

小説「きみのお金は誰のため」ーアフリカ支援をする堂本さんのモデルー

本小説では、アフリカ支援をする堂本という男が登場する。 アフリカに寄付するだけではアフリカのためにはならないという堂本は、彼らが自立して、自走できるような支援をおこなっている。その堂本から主人公の優斗たちは、生活の豊かさとは何かを教わる。 実は、この堂本にはモデルが存在している。 NPO CLOUDYの代表理事を務める銅冶 勇人さんである。 小説の中の堂本さんと同じく、彼はアフリカの人々が生産に関わったバッグやシャツを日本で販売し、その売り上げをアフリカの教育などに活用す