田内学

著書「きみのお金は誰のため』『お金のむこうに人がいる』 連載 VERY「ママのための『お金の教育』悩み相談室」/AERA「経済のミカタ」 ゴールドマンサックスで金利トレーダーとして16年勤務したのち、現在は金融教育家として活動。 財政、年金、金融教育などの講演を行う。

田内学

著書「きみのお金は誰のため』『お金のむこうに人がいる』 連載 VERY「ママのための『お金の教育』悩み相談室」/AERA「経済のミカタ」 ゴールドマンサックスで金利トレーダーとして16年勤務したのち、現在は金融教育家として活動。 財政、年金、金融教育などの講演を行う。

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小説「きみのお金は誰のため」を読み終えたみなさまへ

著者の田内学です。 このたびは小説『きみのお金は誰のため』を読んでくださり、ありがとうございます。 こちらのサイト「お金の向こう研究所」では、主に身近なお金や経済についての発信をしています。大部分は無料で読めるので、フォローしてもらえると嬉しいです。 一部、日記的な私の活動部分や裏話の箇所だけが有料になっています。こちらは、マガジン『半径1mのお金と経済の話』(月額500円) (https://note.com/mnbtauchi/m/m1d1eeb896105)を購読

    • エネルギー政策の底にあいた穴

      永遠に水を汲み続ける罰というものが存在するそうだ。 ギリシャ神話に登場するダナイデスという娘たちは、水がめを満たすために水を汲み続けているのだが、底に大きな穴が開いているせいで、永遠に作業を終えられない。 この神話が、いまの日本の状況に思えてならない。 自民党の政権運営は混迷しそうだが、経済対策の大きな柱の一つはガソリンや電気代の物価高対策になりそうだ。 電気代が上がっても、政府がお金を払ってくれるなら、個人としては嬉しい。しかしながら、そのお金はダナイデスの水がめのよ

      • 「若者です」から始まるコメントに学ぶ、教育に一番必要なこと

        YouTubeのコメントで、教育に一番重要なことを教えてもらった。 「若者です。」から始まるその投稿を見たのはしばらく前のことなのだが、講演につかう資料を作りながらその重要性を改めて実感した。 今回、僕が基調講演を依頼されたのは、J-FLECが主催する金融教育イベントだった。J-FLEC(金融経済教育推進機構)は、今年発足したばかりの官民一体で金融教育を推進する団体の略称だ。 金融教育とは、「お金や金融の仕組みを理解し、それを通じて自分の生活や社会全体の在り方を考える力を

        • ヒゲ脱毛と投資教育 共通する現代社会の闇

          ヒゲが生えている男はモテないそうだ。 なんの話やねん。そう思って読んでいるとヒゲ脱毛の広告だった。最近では、若い人の間でヒゲ脱毛をする人が増えているとも書かれていた。たしかに、毎日ヒゲを剃るのも面倒だし、ヒゲ脱毛をするのもありだなと少し考えてしまった。 「モテない」といった不安を煽る言葉に、僕らは敏感に反応してしまう。今回のタイトルにつけた「現代社会の闇」というネガティブなフレーズが気になって、この記事を読んでいる人も多いのではないだろうか。 (※この投稿はAERAの記事

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        マガジン

        • 半径1mのお金と経済の話
          ¥500 / 月
        • 「きみのお金は誰のため」読者限定マガジン
          16本

        記事

          豚キムチから考える食料自給率

          *アエラに連載中の「経済のミカタ」を一部変更して掲載しています* 円安やアメリカ産牛肉の生産量の減少によって、輸入牛肉の価格が上がり続けている。豚肉は国産も輸入も価格があまり変わらないそうだ。 このミートショックの話を聞いて、ふと大学時代の話を思い出した。 その日、住んでいた学生寮の食堂で、寮の先輩が食事の準備をしていた。彼は50%引きのシールが貼られたメンチカツをゲットしていて、さらに豚キムチを作っていた。 あまりにも肉肉しい献立に、「野菜食べた方がいいですよ」と余計

          豚キムチから考える食料自給率

          「インフレ対策に株式投資」本当に信じて大丈夫?

          昨日、『羽鳥慎一モーニングショー』に出演したとき、大谷選手の活躍についてコメントを求められた。 彼のすごいところは、前例に囚われずに挑戦し続けるところにあると思っている。高校時代の恩師、佐々木監督が、「先入観は可能を不可能にする」と常日頃から言っていたそうだ。 「先入観」は、人を思考停止に陥らせる。 僕がトレーダー時代に気をつけていたのも、先入観に惑わされないことだった。どんな可能性も起こりうることをつねに考えないと足をすくわれる。 金融市場では、これまでの常識が覆されるこ

          「インフレ対策に株式投資」本当に信じて大丈夫?

          伏線を張る男と総理大臣までの距離

          小説の伏線は、最後の章で回収されることが多い。 ページが残りわずかになると、読者は心を動かす準備をする。 しかし、現実の人生はそんなにうまくいかない。 放置されたままの伏線もあるし、中途半端な結末に終わることもある。 そして、二度回収されることもある。 以前にもnoteで書いた話だが、最近二回目の伏線回収があったので、再び書きたいと思う。 彼に出会ったのは、今から5年前、2019年の夏だった。 カリスマ編集者が張った伏線 僕は原宿にある佐渡島さんのオフィスを訪れてい

          伏線を張る男と総理大臣までの距離

          経済学とは『愛を節約する学問』

          男女ともに結婚相手に求める条件の1位は「年収」なのだそうだ。共働きを前提に家庭を作ることが当たり前になっているのだろう。  実際に、総務省の調査によると昨年2023年には夫婦ともに雇用者である共働き世帯は1200万世帯を超えて、専業主婦世帯のおよそ2.5倍になった。「働く女性」が増えて、「女性が活躍する」社会になったと言われている。  この言葉に僕は違和感を覚えるのだ。  決して、女性の労働参加や社会進出を否定しているわけではない。むしろ逆である。少子高齢化が進んで、日

          経済学とは『愛を節約する学問』

          「金融所得課税」と「富の再分配」

          今回のテーマの金融所得課税の強化については、自民党の新総裁、石破さんが提唱しています。 以下は石破総裁が誕生する前に、AERAに掲載した記事を転載してます。 ーーーー  自民党総裁選の候補者9人が出揃い、政策についての議論も始まっている。そのなかでも特に議論を深めてほしいと思ったのが、金融所得課税の強化だ。早い話が、投資でもうけた人に増税するということだ。 「増税」という単語にアレルギーを持っている人は多い。中には、「お前は財務省の手先か」と血相を変えて怒りだす人もい

          「金融所得課税」と「富の再分配」

          進次郎氏への失礼質問が暴く低迷日本の縮図

          「弱点を補ってくれる仲間を作る」の重要性先日、小泉進次郎氏の自民党総裁選への出馬会見で、フリーの記者が投げかけた質問が大きな話題になった。 「小泉さんが首相になって、G7に出席されたら知的レベルの低さで恥をかくのではないか。みなさん心配しております」 この挑発的な質問に対し、小泉氏は冷静かつ見事な切り返しを見せた。 「足りないところを補ってくれる最高のチームを作ります」と、自分の弱点を認めながら、具体的な対応策を示したのだ。 この回答には賞賛が集まったが、それ以上に「

          進次郎氏への失礼質問が暴く低迷日本の縮図

          高騰する不動産は”善”なのか

          52平方メートル1億円、83平方メートル2億5千万円、150平方メートル6億円。  週末、新聞に折り込まれた不動産広告を見ながらため息が出る。東京の特に都心部では恐ろしいほどマンションの価格が高騰していて、その余波がじわりじわりと周辺部や地方都市へと広がっている。  不動産市場が活況で景気が良くなっているという人もいる。これは本当にいいことなのだろうか?  東京23区の今年7月の中古マンション価格は1年前より7.4%上昇しているそうだ。知り合いの不動産業者によると、立地

          高騰する不動産は”善”なのか

          好きになれない新紙幣とGDP

          受け取った紙幣からメガネのオヤジの顔が現れると、僕は少し不機嫌になってしまう。北里柴三郎に恨みがあるのではなく、新千円札がなかなか使えないのだ。  キャッシュレス決済を心がけている僕は、現金を使うシチュエーションが限られていて、もっぱら使うのは時間貸駐車場を利用するとき。ところが、新紙幣に対応していない自動精算機がいまだに多く、使えなくて困っている。  5年ほど前に新紙幣が導入されると決まったときに、経済が良くなるという報道がなされていた。 「新紙幣による1.6兆円の経

          好きになれない新紙幣とGDP

          円安と円高、結局どっちがいい?

          ダイヤモンドで有名な某宝飾店の人から、7月の売り上げがめちゃくちゃ伸びたという話を聞いた。 「円安の影響で8月に値上げをします」と顧客に電話して回ったところ、駆け込み需要が相次いだそうだ。この数年で僕らは円安に相当敏感になってしまった。小麦粉も牛肉も電気代も、家を建てるときの木材の費用だって、輸入に頼っているものはこの数年の円安のせいで爆上がりしている。 「いったいどこのどいつなんだ、円安がいいと言っていたのは!」 僕だけじゃなくて、世の大勢の人が思っているだろう。でき

          円安と円高、結局どっちがいい?

          円安を止めた、僅か0.25%の利上げ

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          AERA連載で蘇る 21年前の教授の顔

          誰しも、人生には忘れられないセリフがある。 そういうセリフは、再生すると当時の場面ごと思い出すのではないだろうか。 そんな人生の一幕は、僕にもいくつか存在している。 8月からAERAでコラム「経済のミカタ」の週刊連載を始めたのだが、冒頭の一文は、21年前に大学の教授に言われたセリフだ。 以下、連載第1回の記事をそのまま紹介する。 「君の能力を、社会のために使ってほしかった」 21年たった今も、そのシーンは鮮明に思い出せる。教授は穏やかな口調だったが、がっかりした顔を

          AERA連載で蘇る 21年前の教授の顔

          NISAの前に知るべき「投資」と「ギャンブル」の違い

          「ギャンブル化」してしまう投資 日銀による想定外の利上げをきっかけに、この1週間で為替相場は1ドル152円から142円まで下落し、3万9000円台だった日経平均株価も一時3万1000円台にまで暴落した(8月5日時点)。 わずか0.25%の利上げでこれほど相場が動いた背景には、アメリカ経済の減速への警戒感が高まったこともあるが、個人投資家による投機的なポジションの積み上がりも一因であろう。 投資商品を勧める際に、「投資はギャンブルではない」と言う者もいるが、一歩間違えれば

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