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選ぶ、選ばせる、受け入れる ―『海のはじまり』第6話・『兄とのはじまり』最終話


「いるから、大丈夫。行きたい方 行きな」

第一話、冒頭の海のシーンで、そう海ちゃんに言っていた水季の姿は、とんでもなく自由奔放な女性に見えた。なんでも自分で選ぶことができてしまう、自由奔放さが水季らしい、と思っていた。

けれど、自由奔放だからって、なんでも自分で迷いなく選べてしまうってこととは違うのかもしれない。自由な人だって、自分の決断に悩んだり、だれかのせいにしてしまいたくなったりすることもある。けれど、自分で選ばないと、いつか後悔のような、苦しい気持ちになることもある。

自分で選ぶ」そのことの大切さを意識したのは、海ちゃんを産むことを選んだあのときだったのかもしれない。「母親だから」というだけではなく、「自分で選んだから」、だからひとりで頑張ろうとしたのだろうし、海ちゃんとの幸せな日々を、楽しんで過ごせたのかもしれない。

夏の月9ドラマ『海のはじまり』、第6話が素晴らしすぎて名作確定しましたので、長文で語らせてください。(2週連続失礼します……)

以下、第6話までのネタバレを含みます!


選ぶ、海ちゃん


海ちゃんは、いつもまっすぐ、ずんずん進んでいく。

アパートを引き払ってたって、図書館が休館日だからって、諦めて帰ったりなんかしない。彼女なりのこれまでのコミュニティを駆使して、自分の行きたい場所に行く。進んでいく道を見つけて、飛び込んでいく。

髪型だってそうだ。夏がせっかく三つ編みを練習してきたのに、編み込みを要求する。じゃあその三つ編みやって、と言うのではなく、自分は今日は編み込みの気分なのだ、としっかりと主張する。(翌日、ちゃんと三つ編みしてもらって嬉しそうだった。しっかり三つ編みに向けて気分を高めていたのだろうか)

海ちゃんが自分で選択できるのは、水季がたくさん選ばせてくれていたからなのだろうなあと思う。選択肢を取り上げたり、道はここしかないと決めつけたりしなかった。だから海ちゃんはいろんな選択肢があることを知っていて、自分で選ぶということを日常的にできていたのだと思う。きっと、たくさん聞かれてきて、選んできて、選ばせてくれたことを嬉しく思っていたのかもしれない。だから、夏にも嬉しそうに「どっち行きたい?」と聞き返したのかもしれない。


選ばせる、夏


夏はしゃべらない。本当にしゃべらない。会話を進めない。言葉で何かを決めようとしたりしない。人に合わせるのが楽で、ついついそうしてしまうらしい。だからなのか、海ちゃんにどうしたいか、いつも聞いてあげる。待ってあげられるし、話をしっかり聞くし、海ちゃんはどうしたいのか、いつも気にしている。

夏はフィルムカメラを持ち歩いていて、海ちゃんと水季の思い出の場所を撮っている。海ちゃんの姿を撮るとき、なんにも言わずにその背中を撮るのが印象的だった。「写真撮るよ!こっち向いて」とか、「笑って」とか、なにかを強要することはない。まっすぐずんずん進んでいく、海ちゃんの姿をただそのまま撮る。「行きたい方 行きな」と声をかける水季と、タイプは全然違うけれど、夏は海ちゃんに、静かに選択肢を与えてくれる人、なのかもしれない。


受け入れる、大和


スピンオフドラマ『兄とのはじまり』の最終話が配信された。夏の弟である大和が主人公の、スピンオフドラマ。

ああ、終わってしまった……わたしは、このスピンオフドラマが大好きなのだ。たった10分ほどのスピンオフなのに、泣いた。大和……

最終話『海』では、兄である夏が連れてきた、姪っ子である海ちゃんとの出会い、海ちゃんとしか共有できない想いと、海ちゃんと出会わせてくれた兄への想いが語られている。

「ママのことちゃんと覚えてる?ずっと会わないでいると忘れちゃわない?」と不安げに、大和だけに聞けた海ちゃんに、「ちょっとずつ忘れちゃってる」と言いつつも、「ぜんぶ忘れちゃうってことは、絶対ないよ。覚えてることはちゃんとある」と目をまっすぐ見て返す大和。大和……

「絶対忘れない!全部覚えてる!」とかきれいごとでごまかさない大和。まじで良すぎ、泣いた。海ちゃん、大和に聞いてよかったね……

大和は、自分で選択していない出会いを、受け入れ続けている。実の母との別れも、新しい母と兄との出会いも、兄の元恋人である水季との出会いも、兄のいまの恋人である弥生との出会いも、兄の娘である海ちゃんとの出会いも、ぜんぶ大和は自分で選んでいない。

けれど、大和はその都度、その出会いに向き合って、ぶつかっていって、好きになっている。まるで自分で選んだ出会いかのように、その出会いを大切にして、楽しんでいる。

大切な出会いって、自分で選ばなくたっていいのかもしれない。あの別れがあったから、あの出会いがあったから、いまのこの楽しい時間があるのだと、そうやって受け入れることができたら、いつか後ろを振り返ったときに、後悔なんてものは残っていないのかもしれない。


週初めの月曜日に楽しみがあってありがたい


第6話。このドラマに中だるみなんてものは存在せず、最高傑作のような素晴らしい感動をもらった第6話。ここから残り数話、どうなっていくのだろう。

毎週毎週、週初めの夜を楽しみな夜にしてくれていて、本当にありがたい。感想があふれだして、今週も語りすぎました。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。来週も楽しみですね!


▼『海のはじまり』の感想note、前も長文で書いてますので、お時間あればぜひ!


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tsuki | つき
最後までお読みいただきありがとうございます!