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新聞の連載小説 about books no.2
二月から、新しい連載小説が始まった。
多和田葉子さんの「白鶴亮翅」は、ハッカクリョウシと読むらしい。
今のところ、このタイトルが何を意味するのかわからない。
連載が進むにつれておそらく解ると思うので、楽しみはとっておくことにした。
調べれば、今は簡単にわかってしまう。
私は新聞の連載小説が苦手だった。
この新聞は三十年近く購読しているし、連載は毎日目にする。
挿絵も見ている。
ーあっ、今日はカラーだ! とか、思いながら。
新連載が始まると、今度こそ読もうと思うのだけれど、いつの間にか読まなくなっている。
連載という形式が苦手なのかもしれない。
ニュースよりもコラムの方が好きなので『天性人語』や『そよ風』とか『窓』も読む。読者投稿の『ひととき』も、とても面白い。
おそらく私は、読み物の方が好きなんだと思うのだけれど、連載小説だけは何時も挫折する。
前回の、池澤夏樹さんの「また会う日まで」も読めなかった。
連載でなければと、残念な気がする。
せっかく掲載されているのにと、思ってしまうのだ。
本も読書も好きなのに、連載小説だけが、なぜか読めない‥。
過去、最後まで読んだのは沢木耕太郎さんの「春に散る」だけだった。
これは書籍化されてからも一気に読んだ。
職場でお世話になったTさんが定年退職するときに、なぜかこの本が浮かんだ。
仕事で同行したとき、一度だけ彼と本の話をしたことがあったからだと思う。
ただ好みもあると思うので、自分で選んでもらう方がいいような気もした。
本を贈れるほど、私は彼の読書歴を知らないのだ。
「お勧めはこれだから」と、図書券と一緒に「春に散る」の広告をプリントして渡した。
「せっかく勧めてくれたんだから、これ読むよ!」
嬉しい反応だったので、今も覚えている。
白鶴亮翅は、今朝で4回目。
『ボイラーを直してもらった経験は明るい思い出になった」 ー本文より
この一行で、私はこの作品が好きになった。
この気持ちはよくわかると、口もとが綻ぶのを感じた。
この連載は完読できると、確信した瞬間だった。