人生1しんどい日
今回は今まで生きてきた22年間で1番しんどかった日を少し。
僕は高校1年生の春、県内でも強豪の野球部に入部した。幼い頃からその高校の野球部に憧れていた僕は、一日でも早く自分の実力を見せつけてレギュラーを掴むんだと意気込んでいた。
そして入学式の日、野球部に入部希望の生徒は1-3の教室に集合してくださいという放送が流れた。入学式終了後、教室に集められた野球部入部希望者は約50名。うち20人はスポーツ推薦で入学し、入学前の3月から高校で練習していたそうで、一足先に顔見知りで談笑もしていた。その時とんでもなく怖いオーラを放った部長先生が登場した。目はバッキバッキ。いかついスキン。それで終わらず、遅れて監督が登場。この時の監督のオーラは一生忘れない。死ぬ直前の走馬灯にも絶対に出てくる。
監督「こんにちは」
選手一同「こんにちは!!!」
監督「小さい、こんにちは」
選手「こんにちは!!!」(爆音)
監督「聞こえない、こんにちは」
冗談抜きでこのくだりを50回はやった。とんでもない所に来てしまった。ワンピースの覇王色を監督はまとっていた。一瞬監督の目を逸らした選手は、明日から練習に来なくていい宣言までされた。
終わった。もう無理や、死んだ。僕は後悔とか通り越して、無になっていた。次の日からは練習が始まる。この時点ではまだ全員の入部が認められてないらしく、ここから3か月間行われる通称「しごき」と呼ばれる地獄の体力メニューに耐えたもののみが入部を認めれるという制度なのだ。結局僕の代はこの「しごき」で10人はやめてしまった。
練習初日。雨が降る中入部希望者50人は200メートルトラックに集められた。50人1人ずつ名前を呼ばれる。返事が小さいと全員がトラック1周。
コーチ「村田」
村田「はい!」
コーチ「村田ー!!」(ド罵声)
村田「はい!!!」
コーチ「トラック1周」
この出席罰走のみで30周はしただろう。雨の中50人が一斉にタータンのトラックをダッシュ。もう夢みたいだった。走ってる自分が信じらられない。
それが終わると10周8分切り。通称「10パチ」2キロを8分50人全員が切れるまで終わらない制度だ。出席罰走をしたおかげで半分以上が2キロを8分切ることができない。僕は1セット目から切れない。というか誰まで切れているかすら把握できない。ひたすら走る雨の中。切れない選手は脱落といって雨の中、体育座りをしてひたすら走っている選手を見る。もうまさに地獄。なんセットしたのかも覚えていない。誰もまともな体じゃない。誰もまともな目をしていない。
そこから筋トレメニュー。腹筋、背筋、腕立て伏せ、リズムスクワット。ひたすら大声を出しながらタイミングを合わせて筋トレ。ユニフォームはびちゃびちゃ。もう人間じゃない。敗者。てか何時代やねんって感じ。(6.7年前)
コーチ「今日はここまで。3分で制服に着替えてこい」
3分!!??
着替えれるわけがない。全身びちょびちょ。50人のカバンがぎゅっと置かれた場所で濡れながらやぞ。
案の定3分で着替え切れかった。するとまさかのもう一度ユニフォームに着替えてこいという指令。そしてそこからもう一度2キロ8分切り「10パチ」を3セット。
さすがに無。感情とかない。ただひたすら走ってる。いや走ることさえできていない。
ほんまにこれ以上記憶がない。とりあえずダメな日。やばかった日。怖かった日。逃げたかった日。死にたかった日。未来を恐れた日。でもこの経験があったからこそ、今どんなことが起きてもあれ以上にしんどいことなんてないって思うことができている。いい経験だったのかなと思っている。
ちなみに僕はそれ以降も「しごき」に全くついていけなかった。しかし、なんとか堪え野球部を辞めずに済んだ。今では本当にやめなくて良かったと思っている。