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サブカル大蔵経465草野心平『酒味酒菜』(中公文庫)
草野心平が居酒屋をしていたことを向田邦子のエッセイで知りました。
1977年底本の本書で描かれるこの時代にはグルメという言葉はありませんでした。だからいいのだと思いました。
この方、作家の片手間に料理をするというより、本当に酒と料理が生きていくことそのものなんだと感じられました。
私は天ぷらのえびでは尻っぽが1番うまいと思っていたから。p.27
本体よりも食感がいいとのこと。私も家族で一人だけいつも、しっぽ食べてます。
糠漬けの隔夜ものの中では大根の葉っぱがなんといっても秀逸である。これもやはり糠漬けの板昆布を細かく千に切って、それらを一緒に混ぜた物へ、根生姜のおろしと七味とをまぶしての、ほうじ茶漬は一寸したものだ。p.34
漬物と茶漬け。これもたまりません。ちなみに大根の葉も私の家族は大好きで、農家のご門徒さんから大根いただく時は、葉をつけたままリクエストします。そうしないと葉をとってしまわれるのです。
お茶の質は別にして、大概の宿屋ではお茶の入れ方が暴力的なのでp.40
私も普段は濃いめのお茶を所望しますけど、旅先のあの安っぽいお茶も好きです。
京極近くの、何と言う露地ですか、京都の人なら誰でも知っているに違いないあの食品横町で、いろんな種類の漬物を買って宿へ持って帰ります。p.46
食品横町!今や錦は観光地ですもんね。
鷄の臓物といっても、所謂もつなどではなく、糞のつまった腸が主である。p.59
臓物とコップ酒を愛する草野心平。
海苔にオリーブ油を塗って、その上に塩をパラパラとかけ、それから調味料をその上にかけ、片面だけ焦がさないように軽く焼く。p.71
この辺り、縦横無尽というか、ハイカラというか。酒のアテ好きというか。元祖パリッコさんみたい。
アンチョビは缶詰のままでも、殊にピクニックの時などに相当イケル。p.76
これも今やソロキャンプの定番。恐るべし草野心平。
「こんな飲み方をしてるのは、もうおまえとおれ位になっちゃったな。小林(秀雄)や林(房雄)も無茶をしなくなったし…」「おれはあんまり知らないが、石川淳はどうなんだい?」「そうか、そうだな。あれも以前とは違うな」p.124
河上徹太郎との会話。すごいなぁ。
右コ左ベンしないこと、これが私の考える居酒屋でのエチケット第一条だ。p.131
キョロキョロしない。肝に銘じます。
昔サラリーマンだった頃、酔うと封筒ごとちぎって捨てる癖があった。南京にいた頃珍しく手に入った札たばを、ガンガン燃えてるストーブの中へ、その束ごとと放り込んだことがあった。「火の車」をやってた頃、弟が死に、その葬式に工面した金を、ガス火でアッという間に燃やしてしまったこともあった。けれどもこれは若気の至りではなく、永年続いた貧乏から金に対するコンプレックスができて、変な負け惜しみから出たのだろう。p.150
この辺り滲み出る大詩人の片鱗。そっか、草野さん、詩人だったのか。
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