サブカル大蔵経372カフカ/頭木弘樹訳編『絶望名人カフカの人生論』(新潮文庫)
〈床の上に寝ていればベッドから落ちることがない。ひとりでいれば何事も起こらない。〉p.52
芸人のフリップ芸のような言葉の集成。
彼は何事にも成功しません。失敗から何も学ばず、つねに失敗し続けます。p.9
何事も成功しないというカフカののび太的人生にドラえもんは現れなかった。しかし、没後世界を揺るがせた。いや、いまだに揺るがせ続けている。これは才能なのか、呪いなのか。
たまたま読む時期が重なっただけなのですが、太宰とカフカは似てるのだろうか。
似てないか…。太宰治は、文壇で認められ、カフカは、一切世間に認められなかった。
結婚したいと強く願いながら、生涯、独身でした。身体が虚弱で、胃が弱く、不眠症でした。家族と仲が悪く、とくに父親のせいで、自分が歪んでしまったと感じていました。彼の書いた長編小説はすべて途中で行き詰まり、未完です。死ぬまで、ついに満足できる作品を書くことができず、すべて焼却するようにという遺言を残しました。そして、彼の日記やノートには、日常の愚痴で満ちています。p.10
家族のせいにするところが最高です。自分のようで…。
自分を信じて、磨かない。〈自分のなかにある確固たるものを信じ、しかもそれを磨くための努力をしないことである。〉p.88
標語にしたいNo. 1。
カフカは、自分で自分を激しく非難しますが、人からの非難は拒絶します。だから、人から非難される前に、先回りしてそれをやってしまうのです。p.111
なるほど…。親鸞さんと類似点あるでしょうか?自己と向き合いすぎる壮絶さ。
新鮮な空気を吸うために、冬の一番寒い時でも、開いた窓のそばで寝ます。p.205
ナイチンゲールイズム。換気第一。夜は体温高いですからね。
今は全く絶望していない人にもぜひ読んでおいていただきたいです。p.259
頭木さんの筆致が限りなく優しい。