サブカル大蔵経629呉茂一『ラテン語入門』(岩波全書)
岩波全書という存在。
昔神保町の岩波ブックセンターに入ったら一面、岩波全書の棚があって壮観でした。
学生の頃、印哲だったので、辻直四郎『サンスクリット文法』をぼろぼろになるまで開きましたが、全く理解することはできませんでした。その時のトラウマが語学・文法アレルギーとして残っていて、今でも岩波全書の装丁を見るとドキッとします。
ラテン語の授業も水曜日の朝イチで受けていましたが途中でやめました。本棚にその時の本書が残っていました。札幌の弘南堂で買ったんだなぁ。読むと、懐かしさと、妙な新鮮さがありました。あらためて向かい合おうかと思ったくらいです。
大学院の試験に二回連続落ちた時、主任教授の今西先生から、どんな言語でもいいから一冊文法書をしっかりと読みなさいと言われたことを思い出します。
文法と例文で200ページ。何故か名詞と動詞の変化が交互に説明されます。その後、名詞などの変化表が100ページ。とにかく原形がわからないくらい変化します。
ローマ市民の用語。p.1
ごく一部の地域の言葉から。
フランス語とラテン語とは現代日本語や琉球語と古事記や万葉集の言葉との関係に似た関係に立っていると言っても差し支えない。p.1
印欧語族としてのラテン語と、ラテン語そのものの特質を盛り込む。
一般にラテン語は原形より見てギリシャ語やサンスクリットよりは壊れた状態を示している。p.2
壊れた印欧語。壊れた方が広がる。
小文字は草書体から後世に区別のため選り出し、近代の印刷業者の習慣から生じたものである。p.4
印刷という文化。
ラテン文字にはK音を表すのに、CとKとQの三文字がある。このうちKは特にAの前に、CはE,Iの前に、QはO,Uの前に使用p.4
この辺りがムズムズする難解さ。
Cicero,Pythagoras,Caesar。p.7
キケロー、ピュータゴラース、カエサル。
amo〈愛する〉、cogito〈考える,思う〉、canto〈歌う〉、habito〈住まう〉p.14
我思う故に我ありのコギト。住まい雑貨のハビト。アモーレ愛、カンターレの歌。
sapio〈賢くある〉、audio〈聞く〉、rideo〈笑う〉、video〈見る〉、p.15
小学館の雑誌って、サピオはラテン語、サライはペルシャ語。黒幕は誰かな?
格は、古代語ではことに極めて大切な概念で、つまりあるものが、文章の中で、どういう位置を占めているか、互いにどんな関係を有しているかを表示するものである。p.16
格に振り回される古典文法学。
主格〈は〉、呼格〈よ〉、対格〈を〉、属格〈の〉、与格〈に〉、従格〈から〉。
luna〈月〉、puella〈少女〉、stella〈星〉、terra〈土地〉、via〈道〉、silva〈森〉、taberna〈小屋,店〉。全て女性名詞。p.19
札幌駅の「ステラマリス」はラテン語?marisは、mare〈海〉の属格だから、「海の星」?「天の河」?「星海」?こういう適当な当て嵌めを戒められていました…。
animus〈心,意〉、deus〈神〉、liber〈書物〉、男性名詞。p.27
神は男性名詞。これがヨーロッパ。
oppidum〈町〉、templum〈社寺〉、verbum〈言葉〉、中性名詞。p.27
寺社は中性名詞。テンプル天ぷら?
bonus〈善い〉p.35
ボーナスという響きの良さ。
habu〈持つ〉の単数一人称過去完了はhabu-eramp.51
過去完了、長い語尾。
caput〈頭〉p.56
語尾子音第三変化名詞。キャプテン。
中動相と言うのは、要するに動詞のはたらき方が、主語、つまり文章なり思考判断なりの中心にある主体に対し、その方に向かっている様相を示す、いわば求心的な動詞作用のあり方を示すもので、例えば〈衣を洗う〉〈人を殺す〉と言うのは能動相に属するが、〈自分の手を洗う〉〈体を洗う〉〈自殺する〉または〈(お金を出して)物を買う〉〈(自分のために)調える〉などと言うのは中動相に属する表現法である。本質的には受動相もこの中動相の一形態とも見做されよう。というのは、〈殺される〉(誰か他人に)のも〈自殺する〉のも、主人公が〈殺す〉作用を受けていると言う点では同一だからである。ただこの場合殺し手が他人から自分かの違いがあるのみで、しかもこのエージェントは文章において不可解な要素では無いから、これがインドヨーロッパ原語以来の表現方式であった。p.86-87
國分功一郎さんの名著『中動態の世界』に開かれていく。
ローマはちょうど飛鳥奈良朝以降の日本のように、紀元前後の爛熟したギリシア文化を受け入れ、その継承者となった。p.180
ギリシアとローマ。ローマとは?