サブカル大蔵経739川崎昌平『重版未定』②③(中央公論新社)
川崎昌平さんの作品は、少ない線なのに、劇画以上の迫力があります。
一見ニヒルで、実は熱い登場人物や著者。その語られる内容は、本や文章と関わるすべての人間にとっての現代最高の応援歌。
読者に対して、出し惜しみしない具体的な情報の提示。デジタル風のアナログ。
新しくて懐かしい。懐かしくて新しい。
大物なのに大物感を出さない感じ。
『重版未定』も愛読していましたが、先日完結したという3巻を書店で買いました。その時に2巻も表紙が見たことないかな?と思い購入しましたが、帰って見たら、2巻は購入済みで、出版社が変わっていたのでした。本書を地で行っている感じです。
2巻
おお…本が壊されていくp.25
(2巻27頁)
…本は残すためにあるのになあp.27
この想いが最終章につながる。
(2巻78頁)
やる気なんていらんぞ 編集者には。ありゃまやかしだ。あると思うと頼りたくなっちまう。編集者に必要なのは現実だけだp.78.79
やる気という幻想。
(2巻111頁)
戻るぞ…本を編集しにp.111
このくだりが本当にかっこいい。
考えてから書いたんじゃ間に合わん。書いてから考えないと。p.178
書くということ。
すみません私の仕事は…言葉をつくることではなく言葉を集めることなのです。p.181
昨日、お通夜の法話で使いました。法名をつけることについて。
本は誰のものか?p.188
著者派か、出版社派か。読者派は?
描けるか描けないかは聞いていない。描くか描かないかを答えるんだ。p.210
あなたの描けない理由は?
この世界にも言葉がある。そしてそれを待つ人がいる。p.213
実は、念仏は、そうなのかも。
3巻
おめさん、読者が何を読んでるか知ってるかい?…言葉ですか?…違エよ。本だp.34.35
内容も記憶も理解もおぼつかない。でも本を読むということ。
「読者が索引したくなる言葉」を大事にしたいかなp.85
学生の頃の索引バイトを思い出します。私のいた研究室では〈索引がないのは本ではない〉という言説があるくらいでした。
表現は 自分のためにするんだp.126
〈相手のため〉という助平心。リアクションを待つ表現は本質からずれてくる。
(3巻238頁)
…流れ続けろ この世から本を亡くさないためにp.238
理想を持ちながら、傷だらけになりながら、それでもとにかく。
読者から金をもらう時代はそろそろ終わる。本のための本を編め。p.275
現在私もKindle Unlimitedで柳沢きみおをひたすら読み続けていますが、どこにお金が流れているのかもうわからないです。