叶わなくていい願いだってあるよって言い聞かせて、
当たり前のように急に告げられた異動に、年度末が重なって引き継ぎの準備が終わりそうになく、4月の初め異動を告げられた3人組で4日間、遅くまで残業を繰り返した。
3日目の夜にわたしが「お腹が空いて力がでない〜」と嘆くとコンビニで唐揚げやフランクフルトを買ってきてくれて、みんなで食べながら引継書をそれぞれが完成に向けて、出来るだけ、いや、本当に取りこぼしがないようにと勤しんだ。
そう、この場所にはなんだかんだ誰かのあたたかさがすぐそこにあった。
あの日食べたコンビニの唐揚げのおいしさを、フランクフルトのおいしさをずっと覚えているような、そんな気がした。
この2年に、そしてここを去ることになんの後悔もないです。そう胸を張って言えるな、と。わたしは全力で頑張りました。見えないものだけれどそれだけがわたしがこの場所にいた爪痕です。1位を目指す難しさ、一人でやりこなす難しさを経験して、わたしはきっとこれからも弱くなることなく一人で全体の数字を背負ってやっていけるんだ、と無理矢理でもそう言い聞かせてこの場所を去りました。
前だけを見て生きていく、それだけです。
お客さまには最後までなんとか時間を捻出して来店していただいたり、その他手紙、お花、お菓子とたくさんいただきました。
「いつも丁寧で明るくて今までで一番良かった」
「あなたならどこに行っても大丈夫、きっとみんな助かると思います」
そんなもったいない言葉のプレゼントをもらいました。さよならする時にかけてもらえるお客さまからの言葉がわたしの成績表だと、いつもそう思って受け止めています。どんなに辛くてもありがとうの言葉が聞きたくて今の仕事をなんとかここまで続けてこれたんだと感じています。
でもそれは逆も然りで、ひどい言葉を投げつけられてまるで通り魔のように心をズタズタにされたり、ひどい扱いをされたり、嬉しい言葉をもらえる裏側にはたくさんの反対場面があることを忘れないでいたいです。
さよならがいつも用意されている仕事だから、
去る時に悔いなく、そしてあなたが担当者で良かったと少しでも思ってもらえるようにと、それだけは営業を始めてから自分の中で大切に大切にしている気持ちです。
春に異動するのは二度目です。
一度目は、最初の転勤で右も左も営業方法さえ分からないまま転勤した春でした。その春からもう幾度も春を超えてきてここに辿り着いた今、やっとやっと少し希望の光が見えた気がします。
真っ黒に埋め尽くされているオセロの盤面に白い石を一つ置いた瞬間に全てが真っ白の世界に変化する、そんな日がくることをちゃんと想像してみる。あの時のあの苦しみも意味を感じられなかった出来事もきっと全てがつながって今を形成している。そしてそれが未来へ繋がっていく。
そう信じて進んでいくことは毎日の感情の変化の中ですごく難しいけれどもなにより尊いことだと思います。
同じ場所にずっといられないからこそ、できる仕事があります。
同じ場所にずっといられないからこそ、もらえる言葉があります。
全部全部、いつの日か必ず回収しようと改めてそう誓った、そんな春の日でした。