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[理系による「アート」解説] 国宝・燕子花図屏風(尾形光琳) ➡どうやったら国宝を個人が購入・所有できるんだ!?

現在展示中の国宝である"燕子花図屏風"は根津美術館に所蔵となっていますが、根津美術館は私立美術館であり、個人が所有していた美術品を公に展示する目的があり、その個人とは"根津嘉一郎"となります。

"燕子花図屏風"級の国宝を個人が購入・所有することができることに興味をそそられ、少し調べてみました。

まず、"根津嘉一郎"に関してです。甲州財閥の有力な構成メンバーの一人であり、株式投資をふくめ、生涯を通じて関わった鉄道会社は40社を数える鉄道王と称された明治・大正の実業家になります(東武鉄道社長としての肩書が有名)。よって、美術品を購入できる資金を持つ、という条件は達成されます。

自身が一番気になったのは、売り手です。そもそも市場に出ないと、いくら資金を持っていても購入できないので、その辺がどうだったかです。"燕子花図屏風"に関して言うと、根津嘉一郎の前の持ち主は西本願寺門主の大谷家だったようです。が、政治的・経済的理由(事業の失敗を含む)のため、どうやら売りに出されたようです。

このような理由で売買が成立したようですが、根津嘉一郎が購入した茶道具は旧大名家からのものが多いように書籍からは見受けられ、どうやら江戸から明治・大正への時代の変換期に、没落していく旧大名家の経済的理由から茶道具・美術品が売りにだされ、その当時もっとも勢いのあった起業家(今で言うベンチャーの社長)に所有が移ることが多かったようです。その例を挙げると、根津嘉一郎だけでなく、"藤田傳三郎"だったり"小林一三"だったりします。

国宝・重文級の美術品はどうも時代の寵児に所有権が移るものらしく、足利→織田→豊臣→徳川な変遷はよく見受けられます。よって、そのような美術品を所有するということは、ピュアに茶道具として使う以外にもステータスシンボルとしての効果もあるようです。

また、茶道具というのは
"他人が良い茶器でやっているのに、自分だけみすぼらしい器でやるというもの気が利かない。…一体お茶というものは、そんな物を見せびらかしごっこする所に味があるのかも知れない。"(一部抜粋)
という根津嘉一郎の発言からもあるように、どうやら競争心を異常に煽るものらしく、道具の争奪戦もなかなか激しく、狡猾な方法をとることもあったようです。

ただし、いつの時代のそうですが、新興の起業家が美術品を買い漁る姿はあまりよい印象を持たれなかったと思います。が、彼らは、大名家の没落による美術品の海外流出を防ぐ、という大義を掲げ、また、実際茶会でそれらを使いこなしている姿を見せることで、"所有するのに相応しい"という世間からの認識を蓄積することへの努力は惜しまず(つまり、開催する茶会は毎回自身の人間の器量を見せる真剣勝負だったと思われます)、国宝・重文を含むあれほどの量の美術品を所有できたのだと思います。

また、現在我々がこれらの美術品を気軽に鑑賞できている以上、それはそれで意義があることだった、と自身は認識しています。

というわけで、そんなことを想像しながら連休中に"燕子花図屛風"を見に行かれるのも、休日の過ごし方としてはよいのではないでしょうか~。美術品だけでなく、美術館併設のお庭もとっても素敵ですよ。

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