【2024 読了 No.51】藪下遊 高坂康雅著『「叱らない」が子を苦しめる』(筑摩書房)読了
不登校が増加が止まらない。
文部科学省の調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数は、小学校が10万5,112人、中学校が19万3,936人の合計29万9,048人でした。これは過去最多の数字だそうだ。
不登校児童生徒数は30年以上にわたり増加傾向にあり、過去5年間も増加しています。不登校割合は、小学校で約60人に1人、中学校で約17人に1人。中学校は、1クラスに2~3人不登校がいることになる。
こりゃすごいね😱
著者の藪下遊氏は、スクールカウンセラー。この本に書かれている事例は全て著者が実際に関わった実話を元にしている。
著者によれば、最近、子どもの都合が良いように環境を「操作」しようとする親が多いという。
事例の一つは、小学校五年生女子の母親。その女子は運動会の副団長になりかったが立候補しなかった。帰宅後、母親に「本当は副団長になりたかった」と話すと、母親は学校に連絡をして「うちの子が副団長になりたいって言っている。どうして聞いてくれなかったのか。もう一度、副団長を決め直す機会を持ってほしい」と不満と共に要求してきたという。
著者によれば、こんな親の「環境を『操作』して欲しい」という要求を受けて、困惑している教員の話を聞くことが多くなったという。
こういう親は、それまでも子どもに合わせて親側が我慢したり調整したりしている。
分かりやすいのは、子供の「食べたくない」という不機嫌さにおののいて、子供の好きなものを出してご機嫌を取ってしまうという例。
そういう親の子は、自分の不機嫌な態度と親の機嫌取り繰りが返されることによって、「食事の偏りを通して、環境を操作できる」ことをかなり幼い段階から経験することになるという。
この本の題は「叱らない」と表現しているが、作者の「叱る」は一般の「怒る」とは随分違う。
作者の言う「叱る」は、親が一方的に「ダメ!」と叱っることではなく、例えば「野菜をもっと食べなきゃいけない」という常識を「思い通りにならない環境」とし、子供の前に毅然と立ちはだかるということである。
その上で、親は同時に「その不快感を受けとめる」という「一人二役」をするべきである。
しかし、その「一人二役」がしやすいのは、せいぜい小学校低学年くらいまで。子どもが幼ければ幼いほどいい。幼いうちに、「そうした『不快感+慰め』というワンセットを通して子どもは不快感を納める経験を重ねていくの」だそうだ。
作者は1度も使っていないが、そういった毅然とした「壁」になれない親の振る舞いを、「腫れ物をさわるよう」と言うのだろう。
このように育てられた子供が大人になれば、何が不満かを言葉にせずに不機嫌な態度を示すだけで、「周りが『俺様の気持ち』をくむべきだ」と思うようになる。
こういう人は、実は昔っからいたと思う。
毅然とした態度のとれない女親に甘やかされた男の子は、そういう我が儘で不機嫌な親父になるんだろう。
少なくとも私は一人知っている。
それは私の父だ。
祖父の会社に跡継ぎとして初めてから役員だった父は、会社の従業員や妻(私の母)や、果ては娘(私)にまで、「周りが『俺様の気持ち』をくむべきだ」と思い、不機嫌な態度で接し、周りを操作しようとした。
私が日本女子大学に合格し、安心して第一志望の早稲田大学の教育学部にチャレンジしようと頑張っていたとき、父が何故か不機嫌な態度をとり始めた。
自分でハッキリ言わない。あくまでも、「『俺様の気持ち』をくむべきだ」という姿勢。
父の言いたいことを私はくんだ。
父は法政だったから、娘に早稲田に入られたくなかったのだろう。
「お父さん、早稲田受けるのをやめるよ。日本女子大でいいよ」と言ったら………
父は、張りついたような笑顔をして、コクンと頷いた。
今は最終学歴が国立大学の大学院になったので、それ程悔しくもなくなったが、当時は無念だった。自分の不機嫌な態度で周りを操作する人は昔っからいる。