【2024読了 No.3】田坂広志著『使える弁証法』(東洋経済新報社)読了。
ハッキリ言って下らない本だった。
行間がえらく広い。繰り返しが多く、噛んで含めるような文体にイライラさせられた。
弁証法のキモたるアウフヘーベン(止揚)について語られるのは最後の最後だけである。
「弁証法を学ぶと…ができる」って繰り返しているけど、では、その弁証法はどう学ぶんですか?って聞きたい。
著者の書いているアウフヘーベンの説明って、高校の倫理の教科書に書いてある程度なんだけど。
著者の強調したい弁証法のキモは、アウフヘーベンではなく、世の中は「螺旋的発展」をすることらしい。「未来回帰」と「原点回帰」は同時に起こるから、「なつかしい」ものが回帰すると言いたいようだ。
「なつかしい」ものが回帰するって内容と、噛んで含めるような語り口。
そう、読んでいるうちに、ジイ様達の講演会で話を聞いてるような気分になった。
こういう講演会の来場者ってのは、だいたい決まっている。講師のサイン入りの本をありがたがって買うくせに、結局は読みもしないで本棚に飾っておく。
最後に文明が東洋から始まり、西へ移ってい…くという話を読んでいるうちに、「あぁ最後は日本に行き着くつもりだな」と分かってしまった。自分の国礼賛はジイ様達の最も喜ぶお話だもんね。
ここは引用してみよう。
「米国の西海岸から、さらに西を望むと、何があるか。
(一行あく)
雄大な太平洋の彼方に、日本という国がある。
(一行あく)
その国は、不思議な国。
世界で最も進んだ科学技術を開花させ、
世界の最先端の資本主義を開花ささせた国。
しかし、その土壌の下には、
数千年の歴史を持つ東洋文明の伝統が流れる国。
もし、西洋文明と東洋文明が壮大な融合を遂げていくとするならば、
それは他のいかなる国でもない、この国においてではないか」
まるでポエム😝
「数千年の歴史を持つ東洋文明の伝統が流れる国。」で、「西洋文明と東洋文明が壮大な融合を遂げていく」のは、
それは日本🇯🇵じゃなくて、中国🇨🇳じゃね?
って突っ込みたい。
中国🇨🇳にヘッドハンティングされて移住した科学者が言っている。
中国は学者や技術者が尊敬される国だって。
日本がダメになったのは、学者、技術者が尊敬されなくなったからだよ。
高度経済成長に急ブレーキがかかり出した1971年のニクソン・ショック頃から、中流意識による妙な平等意識が強くなって、勉強のできる子を同級生や時には教師までもこぞってぶっ叩くような風潮が広がったんだよ。
勉強のできる子は将来の科学者の卵なのにね。
日本学術会議のことが問題になったとき、Twitter(現X)でこんなのがあった。
「日本学術会議などにかけるお金があるなら、命の電話の人たちに援助してほしい。この人たちは人の命を救っているのだから」
科学技術の発達が自国の繁栄に繋がることをを全く理解していない発言である。
こういう思考をする人が益々増えているのだから、「技術立国」は遠くになりにけりだね。
もう、かつての繁栄は戻ることはないだろう。