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【2024 読了No.63】高橋和夫著『なるほどそうだったのか!!パレスチナとイスラエル』(幻冬舎2015年発行)読了

新科目『歴史総合』は、日本史講師としても新科目。自分の担当はあくまでも『日本史探求』だけとされているが、両科目にわたる内容については深く話せるのが理想だと思う。
先ずは『日本史探求』でも大切な第一次石油危機に関わる1973年の「第4次中東戦争」に触れるのは当然だが、その背景で、かつ『歴史総合』の教科書に出てくる第2次(1956年)、第3次(1967年)の中東戦争。そして、その後の1993年の「オスロ合意」にも触れたい。
そんな気持ちからパレスチナ問題の本を選んだ。

その前提条件としてのイスラエル建国の前提の歴史は必須。欧州のユダヤ人排除の論理、特にナチスドイツのその論理を学ぶ。この本は全体的に単純明快で分かりやすかった。
「ナチスは、神は世界で一番優秀な民族としてドイツ人を創られた、と主張した。」
ここ迄は多く人が知っていることであるが、この後の展開がウルトラC並なのである。
「(それなのに、ドイツ人が)ユダヤ人と混じり、その優秀な民族の血の純潔を汚してきた。それに対する神の罰が、第一次世界大戦でのドイツの敗北であった」

そぅ~来ますか😱😱😱

それから、ガザ地区を支配しているハマスとアラファト議長の流れを汲むファタハの区別が大切。単に反イスラエルのテロリスト軍団だけでは済まない。

この説明中の「たとえ」が分かり易かった。アラファトのPLOにおける権力構造の説明に、自民党の派閥の力学を「たとえ」として使った説明は、つい吹き出してしまう🤭位面白くて秀逸だった。
「アラファトは、鵜の群れが全滅した鵜飼であった。」
しかし、オスロ合意は全く意味がなかったのだろうか?それはない。仲介したノルウェーにとっては、中東政治におけるその存在感を示した。そして、この本の凄いところは、なぜ北欧のノルウェーが中東政治に影響力を持っていたかの理由もしっかり書かれていた。

書かれていることは多岐にわたり、1回読んだだけでは全ては頭に入るわけではないが、私はKindleで読んでいる。だから、気になった用語については常に検索🔎できる。前に戻って復習できる。Kindleで1度買った本は何時でも何処でもワンタッチで呼び出せる。Kindleを読書の中心にするとは、いわば本棚を常に携帯することなのだ。

閑話休題。
イスラエルの政治は原則二大政党である。パレスチナの人々と融和的な路線の労働党と、タカ派のリクードである。ただ、それに少数派ながら影響力を持つ政党もあるから分かりにくい。
この二大政党の支持勢力の考え方の違いは、出身に寄るものらしい。
労働党の支持勢力は、アシュケナジームと呼ばれる欧州出身ユダヤ人で、リクード(タカ派)の支持勢力は、セファルディームと呼ばれるアジアアフリカ出身ユダヤ人。
アシュケナジームは、イスラエル建国前から地道に土地を購入して入植してきた人が多く、パレスチナのアラブ人には融和的だった。しかし、1973年の第四次中東戦争以降、セファルディームを支持勢力とするリクードの優勢が続き、イスラエルは右傾化している。

対立するのは、政党だけではなく、そのバックにいるアメリカのロビー団体にも対抗の図式が見える。代表的なのは、エイパックと新興のJストリートである。
そもそもアメリカの政治に影響力を与えるロビイストたるものの、具体的な活動についても全く無知だったので、いい勉強になった。
しかし、作者の「オバマ大統領の積極的関与による和平の進展への期待が、アメリカの内外で高まっている。」という予言は当たらなかった。その後のパレスチナの展開については、もう少し新しい本を読まねばならない。

最後に一つ。
オスマン帝国を「オスマン・トルコ」と表現するのはやめましょう。そう表現したら、「オスマン史に暗い人」と判断されちゃうそうです😅

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