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小説『introduction』

「じゃあ、定期ライブお疲れ様でしたー!」
グラスが一斉に高鳴る。天王寺にある古ぼけた居酒屋。いつもサークルでライブを開催した後、決まってここで打ち上げを行う。今夜も、狭い座敷に部員がすし詰めになって酒を飲みかわす。

俺はいつも絡むサークルの仲間と話す。
「・・・どうなんだよ?卒業したらどうするんだ?」
「んー、まあ、音響関係の会社で働くかな」
「バンドは?」
「無理無理。プロで食っていけるほど才能ないし」
「けっ、お前もそれぐらいの奴か・・・」

俺は思わずがっかりしてしまった。季節はもうすぐ春。この時期の話題と言えば、桜、進級、卒業、就職。桜以外は気が重たくなる嫌な話題ばかりだ。俺が在籍する音大のバンドサークルも、就職という一大行事には勝てない。音楽を続けたい思いを抱えながらも、その多くは夢を諦め会社員としての道を選ぶことになる。

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