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文学フリマ大阪11を振り返る

同人サークル【文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome】は2023年9月開催の文学フリマ大阪11にて絵本『空想 日常鳥図鑑』および詩集『つぎはぎポケット』を発表・発売いたしました。本記事ではサークルメンバーが文学フリマへの出店について振り返りを行った記録を掲載しています。


座談会前半は こちら

出店時の思い出① - 趣味仲間

水 (= 水述みずの あきら)「当日のことで、何か思い出などはありますか?」
彩 (= 彩田さいたチエ)「めちゃくちゃ個人的なんしかないですわ。笑」
水「笑 どうぞ」
彩「自分たちの後ろのブースにいた人の……」
水「めちゃくちゃ個人的だなぁ! しかもそっちなんだ、知り合いが来た話じゃなくて」
彩「違う、ポルノグラフィティの人体模型のグッズが置いてあって話しかけに行って……」
※ 彩田はポルノグラフィティのファンです
水「ガチ個人的やん」
彩「その後、Twitterで繋がりました」
水「そうなんだ。良かったね」
彩「良かったです。笑 お友達ができました」
水「その人が読んでくれていたら良いですね」
彩「『つぎはぎポケット』の方を買ってくれました」
水「そっちを買ったの? 『空想 日常鳥図鑑』の方は?」
彩「買ってない」
水「まさかの」
彩「残念ながら買ってもらってない」
水「来年もし出店したときに同じ人がいたら、そのときに買ってもらいな」
彩「そうですね」

出店時の思い出② - 友達

水「良いんですか? お友達が来た話はしなくて」
彩「お友達来ましたね」
水「どういう関係なんですか?」
彩「大学の、同じ園芸の授業を取っていた仲間の一人というか。大学を卒業ぶりに会ったので」
水「最初、なかなか誰か気付かなかったような」
彩「そうそうそう。お互いに『うん?』みたいな」
水「お互いにではないよ。向こうは『彩田さんですよね~』みたいな顔で僕らのブースに近寄ってきてたよ」
彩「そうですね、でも最初に名前間違えられちゃったから」
水「そうなんだ」
彩「Instagramで宣伝してたら、来てくれましたね」
水「良いですね」
彩「めっちゃくちゃ嬉しかったです」
水「僕も一応、Instagramで個人的に『出店します、場所はここです、この日です』という宣伝をしたんだけれどね、けっきょく本当の身内……血縁しか来てくれなかった」
彩「血縁。笑」
水「あとは我々の共通の知人が、毎年来てくれるくらいですね」
彩「大量に買ってもらいました」
水「謎のじゃんけん大会システム。笑 知人Aが彩田さんと僕とそれぞれじゃんけんをし続けて、連続で知人が負けた回数だけ同じ本を買ってもらうという、知人に何のメリットも無いシステム。彩田さんは鳥図鑑、何冊買ってもらったんでしたっけ?」
彩「鳥図鑑が多かったのか」
水「彩田さんは彩田さんが連続で買ってたと思うので。……5冊くらい?」
彩「4冊かな」
水「そこでもう2800円の売り上げが。僕は普通にじゃんけんに即負けたのでつぎはぎを1冊買ってもらっただけですけど」
彩「残念ながら」
水「でも去年買ってもらった『Shall we デカダンス?』もまた買ってもらってるから、無条件で。これに関してはじゃんけんとかもなく、ただ買ってもらったので、ありがてぇ~って。去年の第一版と今年の第二版では厚さが違うので」
彩「厚さが違う。笑」
水「よりずっしり感があります、と。逆だけど。本来は『よりスリムになりました』であるべきだけど」
彩「より分厚くずっしりと……」
水「より逆コンパクトになりました」
彩「あんまよろしくない。笑」
水「同じ本の二冊目を、普通に買ってもらいました」

売れ行き① - 文学フリマ

出店時の様子

彩「今回は全体的に前回よりも多く売れましたね」
水「ですね。前回は『Shall we デカダンス?』一本槍だったので……。笑」
彩「えいえいって。笑」
水「最初から無理があったんですが、今年は『Shall we デカダンス?』『空想 日常鳥図鑑』『つぎはぎポケット』を持って行ったので。──しかも絵本と詩集はよく売れましたよね?」
彩「そうですね~」
水「見てくれる人が多くて」
彩「手に取りやすかった」
水「前年度の失敗を踏まえたこともあり、今年はかなり上手く立ち回れたかなと思います。上々の出来だと思いますね」
彩「嬉しかったですね」

売れ行き② - 社内販売

水「後日、社内でも……社内って弊社なんですけど。笑」
彩「水述さんの会社」
水「話しかけられる社員に対して手売りしているんですが、けっこう実は売れていまして。『Shall we デカダンス?』に関しては既に去年の段階で3人の方が買ってくれていたので、その方々を除いて今年は5人ですね」
彩「おお~、すごい」
水「『空想 日常鳥図鑑』は、今年買ってくれた人が……」
彩「はい」
水「9人です」
彩「ええっ、すごっ。最高。ありがとうございます」
水「『つぎはぎポケット』は、11人」
彩「うぉ~すごい」
水「社内販売で、それだけ売れています」
彩「ありがとうございます」
水「なかなかだと思います。社長も買ってくれたし」
彩「すごいな」
水「さっきも言ったけれど、社長に『うんこ』って文字列を読ませられるの最高」
彩「良い会社ですね」
水「『うんこ』は売る前から実は意識してたんだけれど、売った後に『やってしまったな~』ということが一点だけあって」
彩「何ですか?」
水「つぎはぎの著者紹介の部分に『労働は好まない』って書いてて。笑」
彩「ほんまや。笑」
水「まあまあまあ」
彩「書いちゃったやん。笑」
水「そんなんで怒られないですけどね。怒られないですけど、会社で配り歩くものにそんなん書くなよっていう」
彩「これ私、会社で売らなくて良かったです。『労働に嫌気が差している』って書いてる」
水「それはやりすぎ。笑 それは怒られる」
彩「笑」
水「一応『彩田さんの自己紹介文の前振りです』ということで僕のはごまかせるので。もし言及されたらそう答えることにしています。あとは単純に、理解がある上司が多いので。『労働なんてみんな嫌やからねぇ』と仰ってる上司がいました。『そりゃそうやねぇ』って」
彩「笑 ちゃんと理解してくれてる」
水「だから大丈夫。
去年の話だけれど『Shall we デカダンス?』を売ったときも自己紹介文は反響ありましたねぇ。浪人したエピソード、これを書いたがために浪人したっていうの、あれはややウケでしたねぇ。面白かったという声がちらほら」
彩「おお、嬉しいな」

分業制

水「今回は本の作り方を担当制にして、メインにアサインされた方が責任を持って完成させるというやり方にしたので、それが上手くはまりましたね」
彩「確かに」
水「鳥図鑑は彩田さんが、つぎはぎは僕が旗振りをして。どちらもメイン:サブが7:3くらいの仕事量で。これが上手くいきましたね。
文章を書くタスクとイラストを描くタスクではどうしてもウェイトを半々にしにくいというか。絵はどうしても描くのに時間がかかるものなので」
彩「うんうん」
水「もちろん文章もいっぱい書いたら大変なんですけどね、時間当たりのアウトプットは文章の方が多いので楽に見えますね。
大変さという次元では定量的に比べられるものではないので、そこは割り切って、各々が『この一冊に責任を持つ』というやり方を取ったのが、功を奏したと思いますね。
今後僕が水色の文庫として、自分が担当する本を作っていきながら、並行して彩田さんには絵本なり漫画なりを作っていってほしいなと思っています。原案は提供するようにするので。まだ実は彩田さんに言っていない本の原案があって……」
彩「そうなんですね!?」
水「原案だけ存在している『ディスコティック・ディスコミュニケーション』という漫画の話はしたと思うんですけど」
彩「はい」
水「それとは別で、絵本の原案を今、作っています」
彩「ええ~、そうなんですか。ここで発表されるんですか。笑」
水「ここで発表されます。笑」
彩「おお~。絵本。良いじゃないですか」
水「鳥図鑑と同じサイズにしましょうか。ページ数も同じくらいになるような分量で考えているので、僕が彩田さんに原案を投げたら後はそっちで完成させてください。鳥図鑑で得たノウハウもあると思うので」
彩「わかりました。──衝撃発表ですね」
水「最近そういうの多いね。笑 久々に会ったからネタがいっぱいあります」
彩「色々びっくりしました」
水「こっちが勝手に進んでるから。さっき、大きな発表もありましたしね」
彩「あれめっちゃびっくりした」
水「録音しといたら良かった。『ええ~!?』っていうところ録音しといたら良かった」
彩「『ええ~!?』になりますよ、あれは」
水「内容はさすがにここでは言えないんですけど」

Fateシリーズの話

水「つぎはぎも鳥図鑑もけっこう売れたので、早くも第二版を刷ることができましたね」
彩「はい、そうですね」
水「9月にフリマで販売した第一版は全部売れたので、10月にそれぞれ30部ずつほど第二版を増版しました。売り上げは上々で、第二版も半分くらいは既に売れていますね。来年の文学フリマで持っていくのは第三版になるかもしれない」
彩「わぁ……嬉しいですね」
水「ちなみに版数が若い本を持っていた方が今後値上がりチャンスがあるのでお得です。我々が有名になったときに」
彩「なるほど、そういうことか。笑 確かに」
水「大事にしておいてください。同人サークルから始まって商業になった例なんていくらでもありますからね」
彩「そう思うとめっちゃ夢ありますよね」
水「FateシリーズのTYPE-MOONとかは元々同人なんですけど」
彩「そうなんですか」
水「『空の境界』っていう、同人の」
彩「はいはいはい」
水「講談社ノベルスを真似た同人の本で──まさに今回、我々が出す本が講談社文庫を真似ているような感じで──オリジナルの同人誌はプレミア付いてますね。僕も欲しいんだけどね、ちょっと手が出せない」
彩「だいぶ有名ですもんね。Fateとかは」
水「Fateはね……物語が多すぎて、全部は追いきれないのが悔しい。僕はFate/stay nightっていう原作のファンではあったんだけれど、Fate/〇〇〇というシリーズがいくつも生まれていて、流石に全部は追えなくなってしまった」
彩「そんなにあるんですか」
水「stay night, hollow ataraxia, Zero, Apocrypha, Strange Fake, Prototype, EXTRA, Requiem, Samurai Remnant, プリヤ、ロードエルメロイII世の事件簿&冒険、ソシャゲならGrand Orderか。まだあるかもしれない。 一つひとつがかなりヘビーなコンテンツなので、正直、追いきれていないです」
彩「そこまで作れるのがすごいですね」
水「偉人を召喚して戦わせるというシステムなので、偉人という元ネタが無限にある分、いくらでも物語が作れてしまうんですよね。日本の英雄に縛って武士とかを召喚して戦うような作品もありますね」
彩「あるんだ。笑」
水「あるのよ。元々はノベルゲー (エロゲ) ですけど、媒体も今では小説とか漫画とかアニメとかアクションゲームとか色々あるんですよ。システムが流用しやすいので。基本形を簡単に説明すると『7人の魔術師が7人の偉人を呼び出して戦わせる。勝った者が優勝』です」
彩「わかりやすい」
水「7つのクラスがあって、どのクラスの英雄を呼び出すかで戦略性が変わるんですよね。セイバーと呼ばれる剣士のクラスが単純な力では最強なんだけど、キャスターと呼ばれる魔術師クラスは策謀に長けているからトリッキーな戦い方をしてセイバーを出し抜く、みたいな。王道の戦い方が必ずしも勝つわけではないので、裏切りとか共闘とかがあってわくわくする」
彩「へえ、面白い」
水「それから、必殺技を出すときには技名を明かさなければならないという制約があるんですね。必殺技の名前で偉人の名前がばれてしまうから、同時に偉人のステータスや弱点もばれてしまうという。だから必殺技を出すまでは偉人は正体を隠しておいて、ここぞというときに諸刃の剣として必殺技を繰り出すっていう。このシステムがよくできていて面白い。戦略性が生まれるので。最近は必殺技を撃ちまくってばかりだけれど」
彩「おいおい。笑」
水「ちょっと別の趣になりつつある。でも初期の作品はその英雄が誰なのかを考えたりするのが楽しかった。世界史に詳しければ当てられたりするので」
彩「そっかそっか」
水「世間一般に伝わっている偉人のエピソードをけっこうきちんとキャラクタに反映させてくれるんですよね。狂人エピソードがある偉人は実際に狂人っぽく描かれているだとか。入念な下調べがされているんでしょうね」
彩「そういう話だったんですね、知らなかったです」
水「──今回もね、脱線してしまいましたが」
彩「Fate語りフェーズが……」
水「Fateシリーズの話、という節ができていることでしょう」

打ち上げ

水「今年はフリマが終わってから、ホストに行きましたっけ?」
彩「行ってないー……はずですー」
水「行ってないかぁ」
彩「行ったら良かったですねー。笑」
水「ホストだったあの子、辞めちゃったけどね。今は別の仕事をやっていたはず。営業職で、営業がはまり過ぎてぽっと出だけど会社でトップの成績なんですってよ」

『チャイナタウン・ビギナー』

水「後は……」
彩「チャナタウン……」
水「『チャイナタウン・ビギナー』ね。向かいのブースの。僕が短歌をやりたくなったエピソードの一つね。
我々の目の前のブースに短歌を売っている方がいて、売られている歌集の表紙がありえんくらい良くて、思わずジャケ買いをしたんですよ。売り子をしながらお客さんがいない間に中身を読んだんですけど、もうそれがすごく良くって。良い本だってわかってからは、自分たちの本が1冊売れたときの『良し』という気持ちよりも向かいのブースで『チャイナタウン・ビギナー』が1冊売れたときの『良し!!』という気持ちの方が強かったですからね。笑」
彩「なんでだよ。笑」
水「それくらい『チャイナタウン・ビギナー』の中身が良すぎた。来年、あの人がブースにいたら挨拶しに行こう。新作が出ていたら買おう。
──良かったよね?」
彩「良かったですね、あの本は」
水「マジで良かった。世界観がしっかりと統一されていて、物語も引き込まれる。何より格好良い。ああいう物語性のある連作短歌を作りたなって思わされましたね。
来年、短歌の本を出すとして、タイトルは『コリアンタウン・マスター』にするか」
彩「安直過ぎる。笑」
水「鶴橋でキムチを漬ける男の物語」
彩「笑 もう作ってるんですよね? 短歌」
水「修正効いたら修正します。なるべくキムチの短歌に差し替えます」

文学フリマ大阪11にて水述が購入した本

反省点

水「今回、反省点を挙げるとするならば、つぎはぎが途中で売り切れちゃって、売ることができなくなってしまったことですね」
彩「笑」
水「あれはミスだなぁ」
彩「そうですね。笑」
水「けっこう持って行ったのになぁ」
彩「あれはSDを減らして……」
水「そう、SDを持っていきすぎた。そしてつぎはぎを持っていかなさすぎた」
彩「ふふふふふ」
水「来年は数を均等に持っていくのをやめて、売れ筋を多く持っていきましょう。何がどれだけ売れやすいかの知見は今回得られたかなと思うので」

次回の目標

水「来年の目標はどうしますか?」
彩「目標……」
水「今年よりも売る? やっぱり」
彩「そうですね。売れたら嬉しい」
水「手に取ってもらいやすい短歌なんでね、けっこう上を目指せると思いますよ。中身をしっかり作って、後は呼び込みの技術。どれだけうざがられないかっていう。うざがられないが、興味を惹けるような呼び込みが必要」
彩「確かに」
水「どうしたら良いんでしょうね」
彩「毎回、設営を直前にわーっとやってしまうので、ちゃんと考えておいた方が良いかもしれないです」
水「本を置く台みたいなのがあって、お客さんから見たら上り坂のようになっていて、そこに表紙が見えるように本が並べられているような。あの台を作った方が良いかもしれないですね」
彩「欲しいですね。あの台があるところは他のブースでもけっこうありましたね」
水「来年は新作込みで4冊になるわけじゃないですか。机の幅的にあれが無いと手狭になってくると思うので。在庫とお金は裏側に置いておくスペースを作って……」
彩「そうしましょう」
水「来年はその準備もした方が良いですね。完全にこっちの話でしたけど」
彩「笑」

総括

水「──まとめると、2回目の出店にしては上々だったのではないかと思います」
彩「はい」
水「第3回も頑張りましょう」
彩「頑張りましょう」
水「はい。以上です。ありがとうございました」
彩「ありがとうございました」

座談会実施日:2023/11/26
参加者:水述 諦 (【文売班 白黒斑】文章担当)
    彩田チエ (【文売班 白黒斑】イラスト担当)

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