てぃくる 70 わたしの首
「おい、菜の花」
「なんだ。ブロッコリ」
「俺の首、どこ行ったか知らんか?」
「市場。それから誰かの腹ン中」
「むー……」
「いいじゃんか。俺なんか、きれいだーって言われるけど、ずっと放置だぜ」
「首取られないだけマシじゃん」
「んー。でも、最後は干し首だけどなー」
「それもそうか」
☆ ☆
いえいえ。
最近は、菜の花の花穂を『菜花』として食すようになっていますよね。ほろ苦さがあるので人によって好き嫌いが割れますが、わたしは好きです。
しかし、菜の花栽培の主目的は種子から油を絞ることです。現在は、人間の体に有害なエルシン酸、グルコシノレートの含有量の少ない品種(キャノーラ種)が搾油用に使われていますが、それはセイヨウアブラナ。菜種油の輸入自由化に伴って、日本在来のアブラナの作付け面積はピーク時の0.1%にまで激減したそうです。
遺伝子組み換えの問題等もあり、国産キャノーラ種の品種改良も進められているようで、それらが普及すれば一面黄金色に輝く菜の花畑の風景が再び見られるようになるかもしれません。
ちなみに野菜の菜花は、和種・洋種のアブラナから食味のよいものを選抜して品種改良されたもの。搾油用のお下がりではありません。
そして、菜種の搾油残滓が菜種粕。昔から良質の有機肥料として用いられて来ました。今でもそのまま肥料として、そして堆肥の原料として活躍しています。
畑を明るいレモンイエローに覆い尽くす菜の花。それは、厳しい冬を凌ぎ切って、やっと訪れた春を心から喜ぶ日本人の心情をよく表しているのかもしれません。
菜の花が月を明かすや日の果てに
(2014-03-22)