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安部公房『壁』読了4

『壁』についての考察及び疑問点
4.『S・カルマ氏の犯罪』について
①タイトルについて
安部公房の作品には登場人物に名前がないことが多い。しかし、この物語の主人公には「S・カルマ氏」という名前がある。(これは「名刺」の名前だが、「名刺」=ぼくと考えていいだろう。)

「カルマ」を調べてみると、「過去(世)での行為は、良い行為にせよ、悪い行為にせよ、いずれ必ず自分に返ってくる。」 という因果応報の法則のこととある。ぼくの行為(物語でぼくは酷い目に会うのだから、悪い行為と思われる)に対する因果応報だと理解していいのだろうか?

それにしてもぼくの悪い行為は物語の中には見られない。日常生活に安住していた行為が犯罪ということになるのか?

それとも名刺であるS・カルマ氏の名前泥棒に始まる行為が犯罪なのか? ぼくが壁になるという罰を負ったところから考えると、前者が妥当だろう。

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