安部公房『砂漠の思想』読了
4度目の読了。
何度読んでもわからない部分が多数あるが、安部公房作品のヒントもたくさん隠れている本。
安部公房の決定的なキーワードを解説者は「砂漠」と言っているし、本の表題にも「砂漠」という言葉が入っている。
しかし、私は安部公房のキーワードは「壁」だと考えている。その「壁」は目に見えない。
その理由を文章から探してみる。
「常識による思考の機械化」
「秩序とは、外界を虚無と考えること」
「つまり、人間というやつは、それほど強く日常性の壁にしがみついている動物だと言える」
常識が支配している日常という社会の中では、人間は思考停止してしまう。日常生活という秩序に慣れた人間にとっては、外界は虚無であり、そこから先を思考することはできない。つまりは日常性という壁の外に出ることが人間にとって恐怖になる。
しかし、芸術とはその日常性の壁を打ち破り、虚無の中から作品を創造しなければならない。それこそがシュールリアリズムであり、安部公房作品の基本になっている。
『壁』や『他人の顔』、『砂の女』、『カンガルーノート』など、安部公房作品は主人公が安住していた日常生活から迷い出て困惑の中、見知らぬ世界に引き込まれていく作品がほとんどである。「砂漠」だって日常生活の壁の外にある「辺境」に過ぎない。
この本の感想を全て書くとなると140字どころか14,000字あっても足りそうにないので、今回はここで終わりとする。