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水木三甫の短編小説よりも短い作り話

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自著の超短編小説(ショート・ショート)をまとめました。 ユーモアあり、ブラックあり、ほのぼのあり、ホラーらしきものあり、童話らしきものあり、皮肉めいたものあり、オチのあるものあり…
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#自殺

眠りたい女《超短編小説》

眠りたい女《超短編小説》

生きているのに疲れて、寝ているときだけは苦しくなかったので、ずっと寝ていられればいいのにと思って、睡眠薬をたくさん飲んだ。
気づいたら病室のベッドに寝ていて、母親が枕元で涙を流して「なんで自殺しようとしたの?」って叫んでいて、私が不思議な顔をしたら、「あなたは睡眠薬をたくさん飲んで死のうとしたのよ」と言われてびっくりした。
私は自殺しようなんて思ってなかった。ただずっと眠っていたかっただけなのに。

遺書(ショート・ショート)

遺書(ショート・ショート)

ゴミ箱から丸めた紙が溢れている。

この世はつらいばかりで何も楽しいことはない。だから遺書を書いている。
最初は遺書の遺の字を書き間違えた。
次に第一人称を俺にするか、僕にするか、あるいは私がいいのか迷った。
平仮名ばかりでは恥ずかしいから、携帯の辞書を見ながら書いている。
最後の仕事くらいマトモにしたかった。

自殺する日を今日にしたが、もう外は暗い。
今日中に遺書を書き終えることは不可能だろう

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幽霊とタイムマシン(ショート・ショート)

幽霊とタイムマシン(ショート・ショート)

まずは僕が幽霊になってしまった理由から話そう。簡単な話で、僕が成仏出来なかったから。
なぜ成仏出来なかったかって? それは僕には殺してやりたいほど怨んでいる人が何人もいたからさ。僕はそいつらを殺してやりたかった。でも、それができなかった。だから僕は、自分を殺したわけだよ。自殺。
そしたら幽霊になったってことなんだ。

幽霊になれば人を呪い殺せるのだから、怨んでいる奴らを呪い殺してやれば良かったんだ

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首吊りの木(ショート・ショート)

首吊りの木(ショート・ショート)

昔、庭に首ツリーと呼ばれていた松の木がありました。
曽祖父、祖父、父がこの松の木で首を吊って自殺していたからです。
私の兄は首ツリーを切り倒しました。兄は木の下敷きになって死にました。
首ツリーの切り株の横には4つのお墓が並びました。
それ以来、家族で自殺した者は一人もいません。