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遺書(ショート・ショート)

ゴミ箱から丸めた紙が溢れている。

この世はつらいばかりで何も楽しいことはない。だから遺書を書いている。
最初は遺書の遺の字を書き間違えた。
次に第一人称を俺にするか、僕にするか、あるいは私がいいのか迷った。
平仮名ばかりでは恥ずかしいから、携帯の辞書を見ながら書いている。
最後の仕事くらいマトモにしたかった。

自殺する日を今日にしたが、もう外は暗い。
今日中に遺書を書き終えることは不可能だろう。
まったく何をやってもダメな奴はいるもんだ。
使い慣れないペンを持つ指が痛い。
遺書を書くことがこんなにつらいとは思わなかった。
なんだか死ぬより生きているほうが楽に思えてきた。
まあ、今日のところはとりあえず寝よう。


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