2022年12月の記事一覧
第5話 謎の甲板週番(6/6)
防衛大学校の開校祭は手荷物検査の関係で学生の家族や知り合い等の見学客で、ごった返し正門から行列ができていた。船頭の悪知恵で報道の腕章が功を奏し、行列をしり目に正門を難なく車で通過した。
船頭は慣れた手つきで誘導員の誘導に従って、臨時駐車場に車を滑り込ませた。
「山口さんは学生舎とか見て学生に直接話を聞いてみるといいよ。一般の大学生とは明らかに違うから。あと、ナンパされないように気をつけてね
第5話 謎の甲板週番(5/6)
五辻は話し終えると、盃に残った酒をグイッと飲みほして宙を仰いだ。
私は、五辻総監の意外なエピソードトークを聞いて、何を質問していいかわからずウーロン茶に口をつけた。
すると突然、
「五辻さんは秋の防大の開校祭に行くんすか?」
いつの間にか目覚めた船頭さんが盃に自分で日本酒を注ぎながら質問していた。
五辻総監は
「一応招待は受けているけど、船頭さんもご存じのとおり僕は防大出身
第5話 謎の甲板週番(4/6)
彼は結局、幹部候補生学校の卒業式までけがが回復することなく「艦船不適」の診断を受け、同期と一緒に練習遠洋航海に行くことが出来ませんでした。
彼は江田内湾に錨泊している練習艦隊に乗り込んでいく同期を陸岸から無表情のまま「帽振れ」をして見送っていました。しかし、卒業式に来ていた彼の母親はそんな息子さんの姿を見て泣き崩れていたんです。
あのシーンは今でも忘れません。彼は母親を抱きかかえて控室に