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第5話 謎の甲板週番(4/6)

 彼は結局、幹部候補生学校の卒業式までけがが回復することなく「艦船不適」の診断を受け、同期と一緒に練習遠洋航海に行くことが出来ませんでした。

 彼は江田内湾に錨泊している練習艦隊に乗り込んでいく同期を陸岸から無表情のまま「帽振れ」をして見送っていました。しかし、卒業式に来ていた彼の母親はそんな息子さんの姿を見て泣き崩れていたんです。

 あのシーンは今でも忘れません。彼は母親を抱きかかえて控室に連れていきました。それが私が彼を見た最後の姿です。

出典:海上自衛隊幹部候補生学校HP(卒業式帽振れ)

彼は、その後同期より半年早く横須賀にある部隊へ配属されました。

 その後、彼が海上自衛隊にいるのかどうかすら恥ずかしながら私は知りません。もし現役で残っていたらそれなりの配置にいるはずでしょうから、私の目にもつくはずです。昔から目立たない雰囲気をもっていましたから私が気づいていないだけなのかもしれませんけどね。もしかしたらすでに辞めている可能性もあるのかもね、ははは。

第5話 謎の甲板週番(5/6)につづく

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